信州大学「信大検定」

 信州大学について興味を持ってもらい、楽しみながら知識を深めてもらうことを目的とした「信大検定」の初級編が2021年3月に公開されました。信州大学附属図書館(以下、附属図書館)と信州大学大学史資料センター(以下、大学史資料センター)が協働して作成されたものです。

写真_「信大検定」ワーキンググループメンバーのみなさま

「信大検定」ワーキンググループメンバーのみなさま(2023年12月撮影)

 「信大検定」の取り組みについて、附属図書館の小島浩子さん、武田佳代さん、大学史資料センターの福島正樹先生、坂元英恵さん、田中圭美さんにお話を伺いました。

 

Q: 「信大検定」を作ることになったきっかけを教えてください。

小島: 2017年度に附属図書館の下に発足した大学史資料センターが、2019年度に組織の在り方等について検討を行い、「自校史教育の更なる展開」をミッションのひとつとして再定義することになったことが、大元のきっかけです。2020年度に入り、新入生の入学タイミングに合わせて、大学史資料センターと附属図書館が協働して企画展示等の自校史教育に関する取り組みを展開する計画だったのですが、2020年初頭からの新型コロナウィルス感染症の影響により、計画の変更を余儀なくされました。そのような状況下で、学生さんたちが「自発的に」「楽しみながら」自校史教育に取り組めるコンテンツを提供するにはどうすればいいかを話し合った結果、クイズ形式の「信大検定」を作ることになりました。必ずしも新入生だけをターゲットにするのではなく、在学生はもちろん信大を受験しようと思っている高校生や地域の方々、教職員や卒業生に対しても信大をよりよく知るための場を作れないだろうか、ということも、そもそもの思いとしてありました。

 

Q: 「信大検定」の一部を元にした動画コンテンツ*も作成されていますね。この動画を作成された経緯を教えてください。

小島: 「信大検定」を動画にしよう、という方向で話が始まったわけではなかったのです。全学的なプロジェクトとして、信州と信州大学を知ってもらうオンデマンド型の授業を創設することになり、そのひとつとして、信州大学史について学べる動画コンテンツを附属図書館と大学史資料センターの共同で作成するように依頼がありました。どのようなストーリーの動画にするか、動画制作会社や授業を担当する教員等を交えて何度も話し合いを重ねた結果、当初はもっと堅めの内容にする予定だったのですが、最終的には、学生さんたちにも親しみやすいように「信大検定」の問題をベースにしたクイズ形式を取り入れることになった、というのが経緯です。

*https://www.shinshu-u.ac.jp/guidance/media/movie/2023/08/post-33.html

 

Q: 動画には福島先生をはじめ複数の教員が登場しますが、教員をどのように巻き込んでいったのか教えてください。

福島: 大学史を知ることは勉学・研究への動機づけのひとつです。大学史は自校史教育と非常に密接な関係にありますから、事業としてその部分を担う大学史資料センターがこの動画に協力することには、全く違和感がありませんでした。

小島: 動画を作成するに当たって、「信大検定」初級編の10問から「歴史編」「キャンパス編」それぞれ2問ずつをピックアップすることに決め、個々の設問に対して、どなたに解説をお願いするのが適切なのかを検討しました。それぞれ挙げると、信州大学史に関する問題(動画コンテンツ:Q3)に関してはやはり大学史資料センターの福島先生が適任でしたし、信州大学のシンボルマーク(動画コンテンツ:Q2)は現在の附属図書館長が広報担当副学長でもあることから館長の東城先生、キャンパス数と所在地(動画コンテンツ:Q1)は動画作成の依頼元である授業の統括責任者である林先生にそれぞれ依頼しました。県外出身者の割合(動画コンテンツ:Q4)だけは、アドミッションセンターに適切な方のご紹介を依頼したという形でした。

 

Q: 「信大検定」の運営体制を教えてください。「信大検定」の問い合わせ先が「信州大学大学史資料センター」となっていますが、附属図書館と大学史資料センターでどのような業務分担になっているのでしょうか。

小島: 「信大検定」初級編および動画コンテンツの作成に当たっては、内容的な部分の事実確認や必要な画像の準備については大学史資料センターがメインで担当し、学内の調整や現在の画像・動画の入手や権利関係の処理やオンラインページの作成は附属図書館で行い、お互いが得意な部分を分業してひとつのコンテンツを作り上げていった、という感じです。

坂元: 「信大検定」に関する問い合わせとして、長野県内の学習塾の先生から、信州大学への受験を考えている生徒向けに「信大検定」を紹介したいとご連絡いただいた事例がありました。先生ご自身が信州大学の出身だったことと、信州大学志望者に限らず様々な学年の生徒さんに興味を持ってもらいたい、ということで、ご相談くださったようです。「信大検定」はオンラインのコンテンツなのですが、その時はコンテンツをプリントアウトしたものを学習塾の壁に貼り出して、みんなで見てくださったということでした。

 

Q: 2020年度(始動時)の体制から2023年現在では構成メンバーの変化はあるのでしょうか。また今後はどのような体制を想定されていますか。

武田: 信州大学は5つのキャンパスに分かれており、各キャンパスに図書館があります。「信大検定」立ち上げ当初は、すべてのキャンパスの図書館職員からプロジェクトメンバーを募集しました。「初級編」を作成した頃からはメンバーの異動などもありますので、今後たとえば「中級編」を作成する、となった場合は、またメンバーを募集して体制を再構築することになると思います。できれば次期プロジェクトでも、各キャンパスの職員が参加する体制が取れれば良いなと考えています。

小島: 実はつい最近、信州大学の広報室からも「信大検定」について問い合わせがあったんです。広報室が発行している広報物でも「信大検定」と似たジャンルのコンテンツがあったり、広報室ならではの視点で「このような問題を作って欲しい」という意見をいただいたりしたことから、「信大検定」の「中級編」を一緒に作りませんか、というお声掛けをしたところ、前向きなお返事をいただきました。今後は広報室と協働で「信大検定」を展開していく、といったことができればと思っています。また、学生さんを巻き込みたいと考えており、学生のイベントサークルに協力してもらえないか、声をかけているところです。

 

Q: 「信大検定」の今後の展望や課題について教えてください。

福島: 「信大検定」の「初級編」を作成したときは、最初にプロジェクトメンバーが考えた約60問から「入学したばかりの学部1年生に最低限知っておいてほしいこと」という目安を基準に、10問に絞り込んでいきました。そこから「中級編」「上級編」と発展させていていく想定だったのですが、課題も見えてきました。というのは、信州大学の学生は、初年次は同じキャンパスにいますが、2年次に進級すると、学部ごとにキャンパスが別れてしまう。そうなってくると、総合大学としての信州大学全体の姿が、個々の学生さんの立場からは見えにくくなってしまいます。そういった部分で、問題の難易度設定がとても難しい。

武田: 特定の学部に特化したディープな内容の設問も面白いのですが、「信大検定」のねらいとしては、自分が所属していないキャンパスも含めて信州大学全体のことを知ってほしい、という意図があります。そのためにどのような仕掛けを作っていけばいいか、ということをこれから考えていきたいですね。

小島: 「信大検定」の知名度を上げることも、課題のひとつと考えています。様々な手段で広報は行っているのですが、回答数はまだまだ少ないのが現状です。

福島: 「信大検定」の設問は元々、信州大学にフォーカスした問題がほとんどでした。一方で、信州大学ならではの特色として、各地に点在するキャンパスそれぞれが地域の歴史に根ざした前身校から発展してきたという事情があり、一点集中ではなく多彩な特色を持った個性豊かな5つのキャンパスによって構成されている大学である、という魅力があります。ここに着目して、地域と信州大学とのつながりという視点での設問を増やしていけば、地域に対するアピールにもなり、「信大検定」そのものの知名度向上にも貢献していけるのではないかと考えています。「信大検定:地域編」などに展開していけると面白そうですよね。

 

参考文献:
大学の知識を深めるWebクイズ「信大検定」の作成について

「信大検定」担当窓口および連絡先:
信州大学附属図書館 図書館サービスグループ
matsulib@shinshu-u.ac.jp(@を半角にして送信してください)


信州大学様のその他取り組み事例:
学生団体との連携による不在者投票支援への協力
https://shindaivoters.org/about/(参照2023-12-21)
https://www.shimintimes.co.jp/news/2021/10/post-15597.php(参照2023-12-21)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei15_02000249.html(参照2023-12-21)

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「ビジョン2025重点領域2企画」担当者チーム
北海道大学附属図書館 城 恭子(取材・文責)

取材日:2023年11月9日(木)