SPARC及びJISC & SURFの推奨する「著者の権利」を留保するための契約書等について

SPARC及びJISC & SURFの推奨する「著者の権利」を留保するための契約書等について

国際学術コミュニケーション委員会
(2006年12月27日)

研究者が、論文の著作権を出版者へ譲渡する際に、著者として論文を使用できる権利を留保するための契約書等のテンプレートと、それらの使用を推奨するドキュメントが相次いで発表されました。

  1. 米国SPARC (Scholarly Publishing and Academic Resources Coalition)
    (1)"SPARC Author's Addendum to Publication Agreement" [pdf 英語(リンク切れ 2021年11月25日確認)]
     「出版契約書に対するSPARC著者添付文書」 [pdf 日本語訳]
    (2)"SPARC Author Rights" 
      [HTML 英語(リンク切れ 2021年11月25日確認)] [brochure pdf 英語(リンク切れ 2021年11月25日確認)]
     「SPARC 著者の権利」(2006年9月15日掲載分を一部修正) [HTML 日本語訳] [小冊子 pdf 日本語訳]
  2. 英国JISC (Joint Information Systems Committee) & オランダ SURF
    (1)"Licence to publish / Licentie tot publiceren"
      [pdf 英語 / オランダ語(リンク切れ 2021年11月25日確認)][doc 英語 / オランダ語(リンク切れ 2021年11月25日確認)]
     「出版契約書」 [pdf 日本語訳]
    (2)"New international model agreement for authors published" [HTML 英語(リンク切れ 2021年11月25日確認)]
     "Copyright Toolbox -- Authors -- Licence" [HTML 英語(リンク切れ 2021年11月25日確認)]
     「著者のための国際モデルの契約書の発表」「論文出版に関するライセンス」  [pdf 日本語訳]

研究者が、論文の出版に当たって出版者に提出する「出版契約書」(多くの場合「著作権譲渡契約書」 "Copyright Transfer Agreement"と呼ばれています)の内容に、一定の制約を加える文書を添付する ("SPARC Author Addendum") か、または、出版者「出版契約書」に代替する契約書 (JISC & SURF "Licence to publish") を提出するというものです。

I. 研究者にとっての意義

研究者である著者は、SPARC等から発表された契約書等を使用することにより、論文の出版に必要な権利を出版者に認める一方、自身の論文を、教育・研究のため、または、非営利目的で使用することを認めさせ、その所属する組織の機関リポジトリや集中型サイトであるPubMed Centralなどへの登載を容易にすることができるとされています。

II. 契約書等の使用の流れ

  1. それぞれの文書を使用する前に
    著者の方々が、これらの契約書等を実際に使用する場合は、事前に、それぞれの解説文書と契約書等の原文(英語等)を注意深くお読みください。日本語訳は参考として掲載しています。

    また、出版者の定める当該雑誌の投稿規程等 ("Instructions for Author"など)や、著作権の取り扱いもよくお読みください。その上で、これらの契約書等を使用することをご検討ください。
    出版者または掲載しようとする雑誌が、著者の所属機関のリポジトリや、PubMed Centralへの搭載を許可する方針を明確に示している場合は、SPARC等の出版契約書を使用する必要はないかもしれません。

    現在、両方の契約書も、主として欧米の出版者と論文著者との間での出版契約を想定しているものです。添付または提出する場合は、英語の契約書をご使用ください。

    ただし、その場合でも、"SPARC Author Addendum" の末尾に明記されているとおり、SPARC及び Association of Research Libraries (ARL) 、JISC、SURF並びにこれらの文書を翻訳・紹介している国立大学図書館協会のいずれも出版契約等の当事者ではなく、いかなる法的な責任も有しません。これらの契約書等の使用の結果生じた、あらゆる損害についても責任を有しません。また、いかなる法的サービスも提供いたしません。

  2. "SPARC Author's Addendum to Publication Agreement"
    前提:
    出版者の用意した「出版契約書」を提出する際に、その契約書に添付するものとして使用します。
    (1)"Addendum" の冒頭の各記入欄に、論文名 (manuscript title)、掲載雑誌タイトル (journal name)、連絡責任著者の氏名(corresponding author) とそれ以外の著者名、出版者名 (Publisher)を記入します
    (2)最後の署名欄に、連絡責任著者が、すべての著者を代表して自署し、日付を記入します
    (3)必要事項を記入した出版者「著作権譲渡契約書」に、「著者添付文書」を添付します
    (4)出版者への提出書類へのカバー・レターに、「著者添付文書」を追加したことを明記します
    (5)カバー・レター、「著者添付文書」を追加した出版者「著作権譲渡契約書」その他の書類を出版者へ送付します
    (6)その後、出版者が「著者添付文書」を承認したならば、「著者添付文書」の末尾に出版者担当者が自署したものが返送されてきます。出版者からの署名済み「著者添付文書」の返送の有無にかかわらず、著者は「著者添付文書」に明記された権利を行使できると、添付文書には書かれています

  3. Licence to publish
    前提:
    出版者の用意した出版契約書のかわりに、この契約書に記入し、出版者に提出します。
    (1)"Licence to publish"の冒頭の記入欄に、すべての著者名 (Name author(s))、出版者名 (Name Publisher)を記入します
    (2)第1条第2項「論文」 (Article)に、論文タイトルを記入します
    (3)最後の署名欄に、すべての著者の同意を得て、それらを代表する著者が自署し、日付を記入します
    (4)その他の書類と一緒にこの"Licence to publish"を出版者に郵送します
    (5)この"Licence to publish"を送付することで、論文の受理後は、著者は、"Licence to publish"の第3条に掲げられた権利を行使することができます

III. 大学図書館にとっての意義

機関リポジトリへの研究成果の登載に当たって、出版者の「機関リポジトリ(セルフ・アーカイブ)に関する著作権ポリシー」の確認作業が大きな障害となっています。SHERPA/RoMEOでの情報提供も必ずしも十分ではなく、それぞれの雑誌の投稿規程("Instructions for Author")等の確認や出版者への問い合わせ作業が残っています。

SPARCやJISC & SURFから発表された契約書等を、研究者・教員があらかじめ論文受理と同時に提出することで、このような確認作業を経ずに、研究者・教員からの申し出に従って機関リポジトリに登載することが可能となるとされています。

出版者または掲載しようとする雑誌が、セルフ・アーカイブやPubMed Centralへの搭載を許可する方針をすでに明確に示している場合は、SPARC等の出版契約書を使用する必要はないかもしれません。出版者の方針が明確あるいは明示されていない場合には、SPARC等の出版契約書がより有効であると考えられます。

ただし、研究者・教員に、これらの契約書等についての情報提供を行う場合は、出版者の当該雑誌の投稿規程等や著作権の取り扱いを十分に読まれるように注意を喚起してください。その上で、研究者・教員自身で、これらの契約書等の提出の可否をご判断いただくようにしてください。一部の出版者は、このような添付文書等による変更を一切認めず、その場合は当該論文の出版は行わないと、投稿規程等に明示していることもあります。