資料の保存に関する調査研究


−「資料の保存に関する調査研究班」最終報告−







平成6年5月


国立大学図書館協議会「資料の保存に関する調査研究班」









まえがき


 資料の保存という問題は図書館が抱える主要な課題であり、過去においても何度か図書
館界において話題になり、議論されたところである。過去における議論の主要なものは、
増大する図書館資料をどのように保存するか、そのための書庫スペース確保の問題、保存
すべき図書館資料を有効に利用するための基準、即ち、不用決定の基準の作成などであっ
た。なお、このことについては、平成4年度において本協議会の保存図書館に関する調査
研究班が設置され、2年間にわたる調査研究の成果が最終報告としてまとめられ、1994
(平成6)年6月の静岡総会において報告される予定である。
 1980年代より我が国において社会的にも衝撃を与えた酸性紙による図書館資料の劣化は、
その対策の重要性が指摘され、これまでの資料の保存についての考え方に大きなインパク
トを与えたものであると言えよう。それは図書館資料が半永久的に利用できると信じてい
たにも拘わらず、紙の内部から劣化する酸性紙は50年から 100年で資料を損傷し、そこに
記された情報まで消滅することが判明したからである。
 1988(昭和63)年に米国で開催された第4回日米大学図書館会議では「資料の保存」が
テーマの一つになり、その最終コミュニケでは「酸性紙の劣化による資料の消失に対する
対策を確立することは緊急な課題である。」としている。国立大学図書館協議会では日米
大学図書館会議の最終コミュニケをうけて、1989(平成元)年の弘前総会において資料の
劣化について討議し同年実態調査を行った。その結果、国立大学でも多数の劣化資料が所
蔵されていることが判明し、本協議会は何らかの対策を講じる必要があると判断し、1991
(平成3)年富山総会において「資料の保存に関する調査研究班」を設置した。
 調査研究班では、「本協議会加盟館における劣化状況調査」をどのように実施するかを
検討した結果、調査事項は、酸性紙に限らず、劣化問題全般について検討することになっ
ているが、その重要性と時間的制約から、酸性紙に焦点を絞らざるを得なかった。また、
半永久的に保存すべき資料の中で、劣化した資料の個々のタイトルを把握することが今後
の対応策を検討する上で重要であると考え、学術情報センターの協力を得てオンラインデ
ータ入力の方法を採用した。このデータ入力を本協議会加盟各館にお願いし、入力期間を
1994(平成6)年11月末日までとした。
 また、当初、この調査研究班は2年の設置期間であったが、1993(平成5)年5月の理
事会において、調査研究班の期間延長が提案され、1993(平成5)年徳島総会における中
間報告の承認とともに、調査研究班の1年間の継続延長が認められた。
 本最終報告では、中間報告で具体的には取り入れることのできなかった資料の保存の対
応策についての調査研究を主な内容とした。その一つは、資料保存の対応策−ガイドライ
ン−について日本及び外国の調査を行ったことであり、そのために外国文献を調査する一
方、日本については資料保存の範囲について国立大学附属図書館へのアンケート調査をも
併せ行った。今一つは1993(平成5)年11月末日までに学術情報センターに入力されたデ
ータを分析し、具体的にマイクロ化にあたっての必要経費の中間試算を行った。これらの
結果を最終報告としてまとめ、中間報告とは別冊として報告することとなった。
 調査研究にあたっては、協力館をはじめとする本協議会加盟館、学術情報センター、公
私立大学図書館、国立国会図書館及び中央大学図書館から多大なご協力とご意見をいただ
いた。ここに厚くお礼を申し上げる次第である。

 平成6年5月

                          国立大学図書館協議会
                          資料の保存に関する調査研究班





目    次


まえがき
第1章 資料保存のための対応策:ガイドライン −−−−−−−−−−−−−−  1
 第1節 国内におけるガイドライン −−−−−−−−−−−−−−−−−−−  1
  1 経緯 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  1
  2 「中央大学図書館資料保存総合対策要綱」 −−−−−−−−−−−−−  2
   (1) 趣旨 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  2
   (2) 方針 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  3
   (3) 方法 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  3
      ア 方法の選択 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  4
      イ 原形保存 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  5
      ウ 媒体変換 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  5
   (4) 予算措置 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  5
   (5) 組織 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  6
 第2節 アメリカの研究図書館におけるガイドライン −−−−−−−−−−−  7
  1 経緯 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  7
  2 資料保存プログラムのためのガイドライン −−−−−−−−−−−−−  8
   (1) 資料保存対策 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−  9
      ア 資料保存の目標・目的 −−−−−−−−−−−−−−−−−−  9
       (ア)シンシナティ大学 −−−−−−−−−−−−−−−−−−  9
       (イ)エモリー大学 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 10
      イ 資料保存の原則 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 10
      ウ 資料保存のための組織 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 11
       (ア)図書館組織における資料保存室(Preservation Office)の
          位置づけ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 12
       (イ)保存担当官の権限と責務 −−−−−−−−−−−−−−− 12
       (ウ)整理部門、閲覧部門及び蔵書管理部門との関係 −−−−− 12
   (2) 資料保存対策の優先順位 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 13
   (3) 資料保存のための意志決定 −−−−−−−−−−−−−−−−− 16
      ア 意志決定に考慮すべき事項 −−−−−−−−−−−−−−−− 16
      イ 意志決定の主体 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 17
      ウ 保存処置のオプション −−−−−−−−−−−−−−−−−− 17
       (ア)置き換え・媒体変換(紙が劣化している場合) −−−−− 17
       (イ)原形保存(紙がしっかりしている場合) −−−−−−−− 17
       (ウ)廃棄(紙が劣化している場合) −−−−−−−−−−−− 19
       (エ)その他 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 19
   (4) 資料の取扱いと保全 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 19
      ア 資料の収蔵 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 19
       (ア)収蔵環境の管理 −−−−−−−−−−−−−−−−−−− 19
       (イ)資料の保管用品 −−−−−−−−−−−−−−−−−−− 19
       (ウ)配架 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 20
      イ 資料の取扱い −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 20
       (ア)移動 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 20
       (イ)職員及び利用者教育 −−−−−−−−−−−−−−−−− 21
      ウ 資料の保護処置 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 21
       (ア)保護処置に使う材料のガイドライン −−−−−−−−−− 21
       (イ)保護処置の選択 −−−−−−−−−−−−−−−−−−− 21
       (ウ)保護処置のオプション −−−−−−−−−−−−−−−− 22
   (5) 劣化資料に対する保存処置の方法と手順 −−−−−−−−−−− 23
      ア 劣化資料に対する保存処置 −−−−−−−−−−−−−−−− 23
      イ 保存処置の手順 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 26
       (ア)貸出部門からの劣化資料の回送 −−−−−−−−−−−− 26
       (イ)保存処置のオプションの選択 −−−−−−−−−−−−− 26
       (ウ)保存処置のオプションの実行 −−−−−−−−−−−−− 27
       (エ)保存部門への「貸出中」の記録の解除 −−−−−−−−− 27
 参考資料
  1 ARL加盟図書館における最低限の保存努力のためのガイドライン −− 28
  2 「原形で資料を保持する際に考慮すべき事柄」 −−−−−−−−−−− 33
  3 「RLG加盟館の収書責任領域における最低保存責務(Minimum pres-
    ervation obligations for RLG members in areas of primary colle-
    cting responsibility) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 35

  4 「エモリー大学資料保存政策」(1986.4.15)  −−−−−−−−−−− 36
  5 「スタンフォード大学図書館劣化図書プログラム(1982)」より −−− 38
      「保存用複写複製」
  6 「スタンフォード大学図書館劣化図書プログラム(1982)」より −−− 40
      「保存用マイクロフィルム化」
第2章 保存資料の範囲−アンケート調査結果− −−−−−−−−−−−−−− 43
  1 半永久的保存とする資料 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 43
  2 原形保存とする資料 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 44
  3 代替保存 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 46
  4 資料保存に関する各大学の意見 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 48
第3章 長期保存対象となる資料の劣化状況調査−中間分析− −−−−−−−− 50
 第1節 劣化状況調査の概要 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 50
  1 調査の概要 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 50
  2 入力状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 51
 第2節 集計結果の分析 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 52
  1 保存すべき資料の酸性劣化状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−− 52
  2 重複所蔵資料による劣化度の相違 −−−−−−−−−−−−−−−−− 53
  3 出版年代による劣化状況 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 58
  4 媒体変換済み劣化資料 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 61
 第3節 媒体変換にかかる経費の中間試算 −−−−−−−−−−−−−−−− 62
  1 計算の根拠 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 62
  2 ページ数等の集計結果 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 64
  3 試算結果 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 65
参考資料
  1 学術情報センター入力データ目録リスト(和書) −−−−−−−−−− 66
  2 学術情報センター入力データ目録リスト(洋書) −−−−−−−−−− 68
  3 学術情報センター入力データ目録リスト例(和雑誌) −−−−−−−− 70
  4 学術情報センター入力データ目録リスト例(洋雑誌) −−−−−−−− 71
おわりに −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 72

1 引用・参考文献
2 参考資料
   (1)アンケート調査要領
   (2)調査結果

〔参考〕
中間報告目次
資料の保存に関する調査研究班設置要領
名簿