II.身体障害者のための体制、サービス、施設・設備等について

2.サービス内容

 視覚障害、聴覚障害、上肢機能障害、下肢機能障害を持つ大学図書館の利用者が、必要 としている特別な図書館サービスを、1)介助的サービス、2)読書支援サービス、3)資料に 関する配慮、4)コミュニケーションに分けてまとめた。

1)視覚障害者のために

 視覚障害には、全盲、視力が弱い、視野が狭い、視野の一部が欠けている、暗い場所で 見えにくい、明るい場所で見えにくい、眼球運動が不安定等のさまざまな障害がある。ま た、同じ障害でも、程度により必要とされる支援サービスは多様である。個々の利用者の 希望を聴取したうえで、各図書館の事情を勘案して対応することが必要である。

(1) 介助的サービス

1 サービス内容

 近年、コンピュータやネットワーク技術の進展により、視覚障害者の情報利用や、遠隔地からの情報アクセスを容易にできる環境が急速に整ってきている。しかし、利用者の要求にきめ細かく対応するためには、人的な支援の重要性は変わらない。図書館職員だけでは十分な支援を行えないことが少なくないが、学内外の関係者や地域のボランティア等との連携が期待される。

A.ガイドヘルプ
 視覚障害者が安全に移動を行えるよう、一緒に歩きながら危険を避けるために必要な 援助を行うサービス。図書館におけるガイドヘルプでは、対面朗読室への順路に限らず、館内の資料配置をはじめ全館の状況を把握させるように配慮したい。これは、単独で図書館を利用することが多い弱視者にとって大切である。なお、視覚障害者が安全に図書 館を利用するために、通路にブックトラックや踏台を放置しないよう注意が必要である。
a.ガイドヘルプの順序
  1. 声を掛ける
    ※相手が気付かない場合には軽く肩に手をふれる。
    ※急に手を引っ張ったりして驚かせてはいけない。
  2. 自己紹介     「私は図書館の〇〇といいます。」
  3. 援助を申し出る  「よかったらご案内しましょうか。」
  4. 目的の確認    「どちらにご案内しましょうか。」
  5. 位置と方向の説明 「××の前です。右手に△△、左手に□□があります。」
  6. 安全の確認
    ※ 次の動作の安全を確認してガイトヘルプを終了する。
b.ガイドヘルプの方法
  1. ガイドヘルパーは視覚障害者が白杖を持たない側(通常左側)の半歩前に立つ。
    • 歩く速度や立つ位置については視覚障害者に尋ね、希望に応じる。
    • 視覚障害者はガイドヘルパーの体の動きで進む方向を感じ取る。
    • ガイドヘルパーの片腕の肘を視覚障害者が後ろから持つ。
    • ガイドヘルパーは視覚障害者が持った片腕を曲げあまり振らないようにする。
    • 両者の身長によっては、肩に手を置いてもらうほうがよい場合もある。
  2. 移動しながら周囲の状況を説明する。
    • 館内の状況把握や現在地の確認に役立つものを説明する。
             (例)「右手にメインカウンターがあります。」
    • 段差はガイドヘルパーの体の動きでわかるが、確認の意味で声をかける。
             (例)「上り階段があります。」「階段、終りです。」
    • 障害物があれば声をかける。
  3. その他の留意点
    • 狭い場所を通るときは視覚障害者に持たせている片腕を後に回し、前後一列になって進む。
    • 荷物があるときは、「よかったらお荷物をお持ちしましょうか。」と申し出る。
    • むやみに視覚障害者の体に触れてはいけない。
    • 視覚障害者を後ろから押したり、腕を引っ張ったりしてはいけない。
    • むやみに白杖にさわってはいけない。白杖の管理は視覚障害者本人に任せる。
    • むやみにガイドヘルプ中に視覚障害者から離れてはいけない。不慣れな場所で待たせる場合は、壁や柱に手を触れさせて位置を把握してもらう。
    • 「こちら」、「あちら」という指示代名詞は使わず、「何歩」、「何メートル」、「左」、「右」、「前」、「後ろ」のように具体的な表現をする。
    • 別のガイドヘルパーを同伴している場合でも、視覚障害者本人と話す。
    • 椅子をすすめる場合には、背もたれに視覚障害者の手を触れさせる。
    • トイレに案内した場合は必要に応じて便器などの位置を確認させる。
             (使い勝手が違うので障害者用トイレに案内してはいけない。)
    • 品物を渡すときは手渡しにする。手近に置いた場合は手で確認させる。
             (お金はお金の種類別に、金額を確認しやすいようにして渡す。)
    • 盲導犬を連れている場合、盲導犬の気を散らす行為をしてはいけない。
B.代筆
 図書館サービスを受けるための各種申込書の記入を、利用者に代わって行うサービス。サービスを受ける主体はあくまでも利用者であり、利用者に内容等の確認を充分に行う必要がある。また、利用申し込みを電子メールや電話でも受け付けると、移動や筆記が困難な障害者に大変役立つ。
C.資料探索代行
 利用者の求めに応じ、館内にある図書館資料を書架から取り出し、館内にいる利用者に手渡すサービス。近年、開架方式をとる大学図書館が多くなったが、視覚障害者が書架で資料を探すのは困難である場合が多い。身体障害者が安全に図書館を利用するためには、気軽に図書館職員や周囲の利用者に援助を求められる環境が必要である。
D.文献複写代行
 館内で健常者が行っている文献複写に係わる作業を、この作業を行ううえで障害のある視覚障害者にかわって行うサービス。複写内容及び複写費用の確認を充分に行う必要がある。通常の複写に加え、フロッピーディスク等の電子媒体への複写も、著作権法第31条「図書館等における複製」の範囲で行うことができる。視覚障害者は電子資料を点字出力、音声出力、拡大表示等の手段で利用することができる。資料を電子化する際に読みとりミスが発生するので、校正作業が必要となるが、これを視覚障害者自身が行うことは困難な場合が多いので、なんらかの支援が必要である。
 なお、相互利用等の文献複写の場合、利用者の求めに応じて、可能な範囲で拡大率の指定に応じると弱視者等に大変役立つ。
E.資料配送サービス(学内)
 利用者の求めに応じて、学内の他の図書館にある資料を、身近な図書館や研究室、自宅等まで配送するサービス。移動に困難がある視覚障害者に大変役立つ。
2 図書館外との連携

 学内に学生・教職員のボランティア組織がある場合、このメンバーには学内事情や図書館の利用についての知識があるため、それらとの連携は図書館利用も含めた学生生活全般にわたる有効なサポートとなる。学内にそのような組織がない場合、地域の社会福祉協議会等に協力を求めるとよい(p.21-25 参照)。この場合、学外ボランティアとの間に、図書館利用についての打ち合わせや事前の研修等の準備が必要になってくる。

(2) 読書支援サービス

1 サービス内容

 大学図書館では膨大な図書や雑誌を所蔵しており、これらを活用することが学習研究活動の必須の条件となっている。視覚障害者が学習研究を進めるうえで必要とする情報を健常者と同じ条件で利用することができるよう、読書支援サービスを行うことが重要である。

A.蔵書検索・文献検索代行
 利用者の求めに応じ、蔵書検索や文献検索を利用者に代わって行うサービス。視覚障害者が音声合成機能や点字ディスプレイが装備されたパソコンを使って、健常者と同じ条件で蔵書検索や文献検索を行うことができる環境が整ってきている。一方、利用者の要求に柔軟な対応ができる人的なサービスも重要であり、図書館の利用に慣れている学生ボランティア等の協力が期待される。
B.対面朗読
 利用者の求める資料を、朗読者が声を出して読むサービス。大学における学習・研究で活用される資料には、図や表を多用したものや、外国語や学術用語などを使ったものが多いが、読書支援機器は現在のところ活字情報が主で図や表は読めない。これに対して対面朗読では、図表の概要を説明したり、必要な部分だけを選択して読んだり、利用者とコミュニケーションをとりながら、臨機応変に朗読ができるので大変有効である。対面朗読の予約は電話でも申し込めるようにするとよい。朗読時間は通常、朗読者にも利用者にも2時間程度がよい。利用者が長時間の対面朗読を希望する場合は、朗読者が交代するとよい。
a.朗読者
 視覚障害者が聴きやすいよう、不必要な抑揚や情感を交えず一定の声音で、安定した調子を保って朗読を行う必要がある。よりよい朗読のためには朗読技術の訓練が必要であり、社会福祉協議会等で養成講座が行われている。初見で専門書を読むことになるので、朗読者の資質として、学習・研究に対する知的な関心や柔軟性、即応性が必要である。大学図書館における対面朗読では、資料の通読以外にも蔵書の検索や新着雑誌の目次の読み上げ、参考図書の参照等の、横断的な読書支援が求められる。また、同時にガイドヘルプの技術も習得しておくことが望ましい。
 視覚障害者の支援を行うために、市民ボランティアが活発に活動を行っているが、大学における学習・研究に対応できるボランティアは不足している。朗読者を確保するために、福祉関係機関等に市民ボランティアの派遣を求める以外に、ボランティアの養成にも連携・協力を行うことが必要である。なお、対面朗読の実施にあたっては、著作権法第38条1項「営利を目的としない朗読」の条件を考慮する必要がある。
b.対面朗読室
 対面朗読室は、机や椅子などの読書支援機器等が無理なく配置でき、通路や盲導犬の待機場所が確保できる広さが必要である。広過ぎたり、狭過ぎたりすると安全に利用しにくい。残響が多いと朗読の声が聞き取りにくい。部屋の位置は、騒音が少なく静かで、視覚障害者が安全に行き来できる場所が望ましい。窓は、建物の外に向かう窓と館内に向かう窓と両方があることが望ましい。入口のドアに窓が設けられているとよい。図書館内では通常飲食禁止であるが、対面朗読中に朗読者が喉を潤す必要があるので、対面朗読室では、他の利用者に配慮しながら飲食禁止を柔軟に運用する必要がある。
 対面朗読に使う机は、狭過ぎると利用者と朗読者が気詰まりで、広過ぎると朗読の声が聞き取りにくいので、4名用の食卓程度の広さがよい。視覚障害者は対面朗読室内の什器類等の配置を記憶しているので、不用意に移動したり、障害物を放置したりしてはいけない。対面朗読と同時にメモ用の録音をするため、簡単な録音設備が必要である。マイクは卓上式で、朗読者の口元に近付けて利用でき、指向性がよいものが望ましい。対面朗読中に読みを確認するために、漢和辞典、国語辞典、英和辞典等で、特に検索が容易なものを備え付ける必要がある。弱視者が対面朗読を受けながら、図表等を確認するのに拡大読書器が役に立つ。ネットワークに接続したパソコンがあると、対面朗読の途中で図書館の蔵書を検索したり、文献検索を行ったりできる。視覚障害者が自分で検索を行ったり、検索結果を確認するために、検索画面の音声読み上げ機能や点字ディスプレイが付いていることが望ましい。また、内線電話があると、利用者や朗読者がレファレンスデスクへの問い合わせなど、対面朗読室から館内や学内への連絡をとるために役立つ。その他、利用者や朗読者から希望があれば可能な範囲で用意するとよい。
2 職員の対応

 視覚障害といっても、全盲、弱視、視野狭窄、羞明(通常の明るさでも眩しく感じて見えにくい)などさまざまであり、それによって求められる対応も異なる。また、すべての視覚障害者が点字を使っているわけでもないし、音声合成装置付きのコンピュータを積極的に利用しているわけでもない。利用者からの希望を聞きながら、適切に対応する必要がある。
 視覚障害者の人的支援の面では、対面朗読をはじめとするボランティアによる支援が注目される場合が多いが、図書館の専門家としての図書館職員の援助も当然求められている。来館が困難な視覚障害者のために、電話や電子メールによる参考質問に対応するなどの工夫をして、視覚障害者の図書館利用のニーズを発掘する努力をしたい。ボランティアとも連携して、必要な視覚障害者の読書支援を行えるようにする必要がある。
 また、各図書館職員が、視覚障害者が図書館の利用のうえからどのような不便を感じているかを知り、可能な範囲で対応するよう努力をすることが必要である。例えば、1)視覚障害者は通路の上の障害物を避けることが困難であるため、ブックトラックや踏台等を不用意に放置しないこと、2)弱視者は配架位置を記憶して資料を探していることが多いので、開架書架の配架変更に健常者以上の不便を感じていること、3)照明が暗いところでは、弱視者の視覚による状況把握が困難になっていること、などを理解しておきたい。

3 図書館外との連携

 学内ボランティア組織との連携が有効であるが、それがない場合は社会福祉協議会等の朗読ボランティアの協力を求めることになる(pp.21-25参照)。しかし、大学図書館の資料、特に専門書・外国語図書等の朗読には専門的知識が必要となる場合もある。そのため、指導教官の助力・助言により、利用者と同じ分野を専攻する学生によるサポート組織が作られている例がみられるが、大変効果的である。また事情によっては図書館が学外者による館内での朗読ボランティアを募集するという方法も考えられる。

(3) 資料に関する配慮

1 サービス内容

 図書館の電子化の進展、電子出版の増加、インターネットによる情報流通の拡大などにより、豊富な内容の電子資料が利用できるようになってきた。電子資料は、点字出力、音声出力、拡大文字表示等の手段を使って、視覚障害者が健常者と同じ条件で利用することができる。従来から、視覚障害者向けの資料形態として、点字資料や録音資料、拡大資料が重視されてきたが、これらだけで大学における学習・研究に充分な資料を確保することは困難である。利用者が資料の形態を選択できることも大切であるが、今後の大学図書館では、電子資料を中心に視覚障害者の図書館利用が推進されることが期待される。

A.電子資料
 視覚障害者は、電子資料を点字や音声、拡大表示などで利用するので、グラフィックな表現やカラーを多用してあると利用しにくい。情報処理技術の進展に伴って電子資料が豊富になることは歓迎されるが、むやみに視覚的な効果を狙った画面構成になると、視覚障害者による利用を阻害することになる。また、資料の電子化にあたっては著作権法第31条「図書館等における複製」、ネットワーク利用にあたっては著作権法第23条「公衆送信権」等の条件を考慮する必要がある。
B.点字資料
 点字版の学術資料の出版点数や作成点数は少ない。著作権法37条第1項により、公表された著作物は自由に点訳することができるが、継続的な利用は見込みにくいので、大学図書館として点訳に取り組むより、外部関係機関や組織を紹介し、視覚障害者自らがこれらを利用できるように支援することを考えたい。
C.録音資料
 点字版と同様、録音版の学術資料の出版点数や作成点数は少ない。公表された著作物は、一部の施設では著作権法37条第2項により自由に録音することができるが、大学図書館で録音資料を作成する場合には著作権者の許諾が必要である。大学図書館として録音に取り組むより、外部関係機関や組織を紹介し、視覚障害者自らがこれらを利用できるように支援することを考えたい。
D.拡大資料
 拡大版の学術資料の出版点数や作成点数も少ない。ポイント数の高い大きな活字の拡大資料が望ましいが、机上版の「広辞苑」程度の大きさの活字であっても役に立つ場合があるので、参考図書を中心に可能な範囲で大活字版や机上版を収集するとよい。これらは、視力の弱った高齢者向けとしても役立つ。
2 図書館外との連携

 点字図書・録音図書・拡大図書については専門的な機関(国立国会図書館、各地の視覚障害者情報提供施設、日本点字図書館、てんやく広場、視覚障害者支援総合センター、RFB&D等)が様々なサービスを行っている(pp.21-25参照)。資料の形態や利用者の目的に応じた連携先を利用者に知らせることにより、効果的なサービスが期待できる。

(4) コミュニケーション

1 サービス内容
A.オリエンテーション
 一般に視覚障害者は、障害のために情報収集において不利がある場合が多く、健常者以上に広い意味での情報リテラシーにおける熟達を必要としている。オリエンテーションでは、図書館の活用に必要な知識だけでなく、学習研究の遂行に必要な情報収集能力を高めることも必要である。電話によるレファレンスサービスや、学内LANを利用した相互利用申込など、一般向けに考えられているサービスの中には、視覚障害者の図書館利用にとって重要なサービスであるものが少なくない。通常の図書館サービスと視覚障害者が特別に受けられるサービスを分けて説明し、それぞれを視覚障害者が活用できるようにする必要がある。オリエンテーションの広報は、学内の支援者から視覚障害者に伝わることを期待して、学内広報紙等の一般向けの広報をまず行い、対象者がわかれば個別に知らせるとよい。広報手段として、電子メールやWWW等の電子メディアの活用が有効である。
B.利用案内
 利用案内の本文はMS-DOSテキストファイル等、対象となる利用者が利用できる電子形態で用意し、図表は拡大図や触図にするとよい。特に、館内概略図は館内の状況の把握に大変役立つ。拡大図は、軽度の弱視者には一般版の案内図を拡大コピーしたものでよい場合があるが、重度の弱視者ではフェルトペン程度の太い線を使う必要がある。点字使用者には、触図が必要である。近隣の盲学校等その他視覚障害者関係機関の協力で立体コピー機が使用できれば簡単に作成できる。拡大図や触図に、拡大文字や点字を添える場合には、あくまでも図がわかりにくくならないように注意が必要である。
2 図書館外との連携

 学内ボランティア組織や社会福祉協議会との協力で、点訳・音訳等により、視覚障害者への個別の情報伝達が可能になる(pp.21-25参照)。

2)聴覚障害者のために

 聴覚障害者のコミュニケーション手段は、障害が起こった時期、特に、言語習得の時期に既に障害があったか否かで異なっている。また、障害の原因や程度によっても異なる。聴覚に障害があっても、図書館の利用にあたって何の不自由もないと考えられがちであるが、実際は、図書館職員に話しかけにくい、館内放送が聞こえないなどから、聴覚障害者は不安を持ちながら図書館を利用している。聴覚障害によりコミュニケーションが困難なために、図書館の利用において不利とならないよう配慮が必要である。

(1) 資料に関する配慮

1 サービス内容

 聴覚障害者の情報収集手段として、字幕・手話入りの視聴覚資料が役立つが、学術資料の出版点数や作成点数は少ない。また、図書館でビデオ資料に字幕や手話を挿入するには、著作権者の許諾が必要であり、技術的にも困難である。

2 図書館外との連携

 各地の聴覚障害者情報提供施設で、一般的な映画、テレビ番組等について、字幕・手話入りビデオの製作・貸し出しを行っている(p.25-26 参照)。

(2) コミュニケーション

1 サービス内容

 大学図書館を利用する聴覚障害者のなかには、口話法を使って健常者と同様に会話ができるものが少なくない。口話法は音声言語を読唇によって理解し、聴覚障害者も音声言語を話すもので、緊張と集中が必要なので、聴覚障害者にとって負担が大きい。対応者は平易で簡潔な表現を心がけ、聴覚障害者の負担を軽くする工夫が必要である。口話法では話し手の口の動きを確認するので、話者は正面を向いて大きな声でゆっくり、はっきりと話すと聴き取りやすい。内容を確認するためにメモを渡すことも有効である。
 込み入った内容の意志の疎通を行なう場合には、手話や指文字が効果的である。手話や指文字ができるカウンター担当者がいる場合には、対応時間帯を表示したり、「手話バッチ」等を装着したりすれば、聴覚障害者が手話を活用しやすい。手話が使えない場合は、筆談で丁寧に対応することも有効なので、筆談に応じる旨の表示をしたり、筆記具や筆記用紙、ホワイトボード等をカウンターに常備して、筆談を申し出やすくする必要がある。掲示をすることは、聴覚障害者に筆談の用意があることを知らせるだけでなく、カウンターの担当者に筆談に応じる心構えを促す効果もある(掲示の例:「耳の不自由な方は、筆談します。」)。
 聴覚障害者の図書館利用において、施設上の問題は少ないが、視覚による情報取得を容易にするため、案内表示やマニュアル等を図やイラストを使った視覚的な構成とし、わかりやすくする必要がある。また、聴覚障害者は、館内放送の内容を聞き取れない場合が多く図書館の利用に必要な情報が不足する。特に聴覚障害者を対象とした内容でなくても、電光掲示板などに表示して、館内放送と同じ情報を視覚を利用して共有できるようにするとよい。少なくとも、当日の閉館時間などの情報を図書館入口に掲示するとよい。また、会話によるコミュニケーションの不足を補うものとして、FAXや電子メール、WWW等を活用できる。
 オリエンテーションに聴覚障害者が参加する場合には、手話通訳や要約筆記を用意するとよい。通常、聴覚障害のある学生は手話通訳やノートテイクの援助を受けながら授業を受けており、これを参考にして同様の配慮をすることが望ましい。オリエンテーションは、一般向けへの参加を促すだけでなく、障害の程度により必要とされる支援サービスが異なるので、個別にも行なうとよい。身体障害者のためのオリエンテーションを行なう準備があることを、必要としている身体障害者自身に知らせるとともに、支援者に知らせることも重要である。オリエンテーションの広報は一般向けと同様に広く行なったほうがよい。対象となる障害者に個別に知らせる場合、電子メールやWWW等の電子メディアも活用できる。

2 職員の対応

 聴覚障害者は外見では援助を必要としているかどうかわからないために、本人が申し出ない限り援助を行うことができない。利用者が気軽に相談できるカウンター環境をつくっておくことと、申し出を受けた際の対応の方法を理解しておくことが必要となる。
 また、聴覚障害者にはオリエンテーション、ガイダンスが特に必要であり、込み入った説明を行う場合には手話通訳者を介する方が有効であることなどを理解しておきたい。

3 図書館外との連携

 手話の経験の少ない者を短期間で通訳できるまでに養成することはかなり難しい。また、図書館職員が、資料の的確な検索法等について利用者に説明できるような専門的な手話を習得するまでには、相当な時間と労力を要する。学内に手話等のボランティア組織があれば、図書館利用について有効な伝達を行うこができる。学内にそのような組織がない場合、地域の社会福祉協議会や専門機関から、手話通訳、要約筆記、ノートテイク等の協力を得ることになる(p.25-26 参照)。なお、聴覚障害者がすべて手話を習得しているわけではなく、情報を入手する方法は様々なので、協力依頼にあたっては利用者の希望に沿った方法を配慮すべきである。

3)下肢機能障害者のために

 車いす利用者等、移動に関わる障害のある利用者への対応をまとめた。また、移動に困 難がある内部障害者(心臓、腎臓、呼吸器、膀胱、直腸又は小腸の機能障害によって、日 常活動に著しい制限がある。)もここに含めた。一般に、内部障害者は外見からはわかり にくいため、周囲の認識が低くなりがちである。実際は、健常者と同様の身体活動を行な うことが困難なために図書館の利用に不自由がある。図書館の利用において、内部障害に とって不利とならないよう配慮が必要である。

(1)介助的サービス

1 サービス内容

 図書館内で介助的サービスを必要とする場合に、いつでも受けられる用意があれば、身 体障害者は安心して図書館を利用できる。

A.車いす介助
 車いす介助をする場合の基本的な注意は次のとおり。1)前後左右の安全を確認し、声を掛けながらいすの後方に立つ。2)発進するときは、両手でハンドルを深くしっかりと握り、ゆっくりと押す。3)速度の変化やショックをできるだけ避ける。4)止まるときは、声を掛けながらゆっくりと停車する。
B.資料探索代行
 利用者の求めに応じ、図書館資料を取り出し、館内にいる利用者に手渡すサービス。車いす利用者が自ら資料を取り出せるよう、高い書架の利用を避けるなど環境を整備することが望ましいが、近年、開架方式をとる大学図書館が多くなり、全ての開架資料を低い書架に配架することは困難である。障害者が気軽に図書館職員や周囲の利用者に援助を求められる環境が必要である。
C.文献複写代行
 館内で健常者が行なっている文献複写に係わる作業を、この作業を行なう上で障害のある身体障害者に代わって行なうサービス。複写内容及び複写費用の確認を充分に行なう必要がある。
D.資料配送サービス(学内)
 利用者の求めに応じて、学内の他の図書館にある資料を、身近な図書館や研究室、自宅等まで配送するサービスである。移動に困難がある身体障害者に大変役立つ。
2 図書館外との連携

 学内にボランティア組織があれば、連携により有効なサポートを得ることができる。学内にそのような組織がない場合は、地域の社会福祉協議会等の協力を求めることになる。この場合、学外ボランティアとの間に、図書館利用についての打ち合わせや事前の研修等の準備が必要となってくる。各地の社会福祉協議会で、ガイドヘルプ(来館時の付き添い)や館内でのサポート等について依頼できる。

(2) 読書支援サービス

 とくに身体の麻痺が強く、文字を凝視することが困難な肢体不自由者では、「1)視覚障害者のために」で述べた、「蔵書検索・文献検索代行」、「対面朗読」が必要である場合が考えられる。

(3) 資料に関する配慮

 今日の大学図書館においては、来館して図書館を利用する物理的なアクセスと同様に、 ネットワークを利用した情報アクセスの確保が重要である。移動が困難な下肢機能障害者 にとって、図書館に来なくても研究室や自宅から資料を利用できる電子図書館に対する期 待は大きい。

(4) コミュニケーション

 身体障害者に対応する際に、介助者がいる場合でも利用者本人に向かって話しかけることが必要である。また、立った姿勢で車いす利用者に話しかけると、話者が上から見下ろした形になるので、姿勢を低くして同じ目の高さにすると話しやすい。また、来館が困難な障害者のために、図書館サービスの申込等を電話や電子メールなどでも受け付けるとよい。
 オリエンテーションは、一般向けへの参加を促すだけでなく、障害の程度により必要とされる支援サービスが異なるので、個別にも行なうとよい。身体障害者のためのオリエンテーションを行なう準備があることを、必要としている身体障害者自身に知らせるとともに、支援者に知らせることも重要である。オリエンテーションの広報は一般向けと同様に広く行なったほうがよい。対象となる障害者に個別に知らせる場合、電子メールやWWW等の電子メディアも活用できる。

4)上肢機能障害者のために

 ページめくりを始めとする資料の取扱いや筆記等に関わる障害のある利用者への対応を まとめた。内部障害者で同様の困難がある場合もここに含めた。

1) 介助的サービス

1 サービス内容
A.代筆
 図書館サービスを受けるための各種申込書の記入を、利用者に代わって行なうサービス。サービスを受ける主体はあくまでも利用者であり、利用者に内容等の確認は充分に行なう必要がある。また、上肢の麻痺や欠損のために、申込書の記入が困難な利用者でも、補助機能の付いたキーボードを利用できる場合が多い。自宅や研究室等の使い慣れたパソコンから、電子メールで図書館サービスの申込をすることができれば大変役立つ。
B.資料探索代行
 利用者の求めに応じ、館内にある図書館資料を書架から取り出し、館内にいる利用者に手渡すサービス。身体障害者が安全に図書館を利用するためには、障害者が気軽に図書館職員や周囲の利用者に援助を求められる環境が必要である。
C.文献複写代行
 館内で健常者が行なっている文献複写に係わる作業を、この作業を行なう上で障害のある身体障害者にかわって行なうサービス。複写内容及び複写費用の確認を充分に行なう必要がある。通常の複写に加え、フロッピーディスク等の電子媒体への複写も、著作権法第31条「図書館等における複製」の範囲で行なうことができる。上肢の麻痺や欠損のために、ページめくり等の資料の取扱いが困難な身体障害者でも、補助機能の付いたキーボードを利用できる場合が多い。図書館資料を電子的に複写するサービスがあれば大変役立つ。資料を電子化する際に読み取りミスが発生するので、校正作業が必要となるが、身体障害者自身が行なうことが困難な場合には、なんらかの支援が必要である。
2 図書館外との連携

 学内にボランティア組織があれば、連携により有効なサポートを得ることができる。学内にそのような組織がない場合は、地域の社会福祉協議会等の協力を求めることになる。この場合、学外ボランティアとの間に、図書館利用についての打ち合わせや事前の研修等の準備が必要となってくる。

(2) 読書支援サービス

 重い資料を扱うことや頁めくりが困難であることから、なんらかの読書支援サービスが必要であり、障害者が気軽に図書館職員や周囲の利用者に援助を求められる環境が必要である。
 また、上肢の麻痺や欠損のために、一般のキーボードの利用が困難な場合には、蔵書検索や文献検索を行なうために補助機能の付いたキーボードが必要である。図書館で各障害者に合わせた障害補償装置を用意することは困難な場合が多いが、オンラインアクセスが可能であれば、自宅や研究室等の使い慣れたパソコンから利用できる。

(3) 資料に関する配慮

 図書館の電子化の促進により豊富な電子資料が利用できるようになっている。電子資料は、資料を手で扱ったり、頁めくりの動作をせずに、キーボード等の操作で自由に読書ができるため、上肢機能障害者が健常者と同じ条件で利用できる。なお、資料の電子化にあたっては第31条「図書館等における複製」、ネットワーク利用にあたっては第23条「公衆送信権」等の条件を考慮する必要がある。

(4) コミュニケーション

 オリエンテーションは、一般向けのものへの参加を促すうえに、機能障害の内容や程度により必要とされる支援サービスが異なるので、個別にも行なうとよい。障害者のためのオリエンテーションを行なう準備があることを、必要としている障害者自身に知らせるとともに、支援者に知らせることも重要である。一般向けの広報と同様の広報手段でも広報し、対象となる障害者に個別に知らせる。電子メールやWWW等の電子メディアの活用も役立つ。

5)身体障害者サービスのための連携先

 大学図書館が身体障害者サービスを展開する場合の主な連携先について、障害のタイプ別に具体的に述べる。

(1) 視覚障害者のために

  1. 社会福祉協議会
    問合せ先:各自治体の社会福祉協議会(ボランティア・センター等の名称のセクションを紹介してもらうことができる。)

     社会福祉協議会は、都道府県、市町村単位で設置されている民間の自主的団体であるが、各自治体の福祉関係の部署に併設されているケースが多い。サポートを希望する個人・団体の申し出により、各種の講習を受けたボランティアが紹介・派遣される。
     視覚障害者に対しては次のようなサポートがある。

  2. 国立国会図書館 視覚障害者図書館協力室
    問合せ先:電話 03−3506−3385(直通)
    住所 〒100-8924 千代田区永田町1-10-1
       国立国会図書館では、視覚障害者サービスを実施している各種図書館に対し、下記のような協力業務を行っている。
    A.学術文献録音サービス
    • 1975年サービス開始
    • 視覚障害者の依頼に応じて、各館(全国の公共図書館、大学図書館、点字図書館等)では製作が困難な専門的な学術文献の録音テープを作成し、登録した各図書館等を通じて貸し出しする。
       ただし、原本は国立国会図書館の蔵書であることが前提。
    • 利用対象:18才以上の視覚障害者
    • 貸出期間:2カ月
    • 製作対象から除外するもの:小説、詩、戯曲、教科書、辞(事)典、年鑑等。また、図表、写真等が多く音声化が著しく困難なもの。
    • 製作数は、毎年900リール前後。予算(謝金等)、製作能力等のため。
          最近の実績 1995(H.7)年度 63冊 644リール(90分テープ)
                1996(H.8)年度 79冊 939リール
    • 留意点:著作権者の許諾を得る手続きから、専門用語の確認、録音、校正等を含めると製作に平均7か月位かかる。もし、原本を所蔵していない場合は納本依頼から始めるので、急を要する資料の新規の製作には向いていないように思われる。
    B.「点字図書・録音図書全国総合目録データベース」の作成
    • 全国の公共図書館、点字図書館等で製作または製作中の点字図書、録音図書を収録している(年2回更新)。レコード数約183,400 件(1997年11月現在)。これを参加館、受付館に配布している(ただし、このデータベースには販売されている点字・録音図書は収録されていない)。
    • このデータベースは、外部機関(「てんやく広場」及び「ニット・プラス」(日本点字図書館)参照)に提供している。
    • 1995年9月から、CD−ROM版「NDL CD−ROM Line点字図書・録音図書全国総合目録」(年2回更新)を刊行。1980年以前の遡及データ入力も開始されている。レコード数約186,600 件。
    • この目録のタイムラグを補い、重複製作を避けるための調査や利用者サービスに役立てるため、総合目録参加館から届いた製作情報を月毎に「全国の点字図書・録音図書 製作速報」として提供するサービスが1997年10月から開始されている。
    問合せ先:国立国会図書館のホームページ「図書館員のためのページ」
    URL http://www.ndl.go.jp/librarian/index.html
    C.視覚障害者用資料の整理・保管・貸出
    • 点字図書、大活字図書、拡大写本は、「図書館間貸出」により利用できる。これらのデータは、上記「NDL CD−ROM Line点字図書・録音図書全国総合目録」に収録されている。
  3. 点字図書館等(視覚障害者情報提供施設)
    問合せ先:各地の視覚障害者情報提供施設
    問合せ先:国立国会図書館のホームページ「図書館員のためのページ」
    URL http://www.ndl.go.jp/librarian/service.htmlの「参加館一覧」
     点字図書館等は全国に91か所あり(1996年3月末)、身体障害者福祉法第33条により「視覚障害者情報提供施設」とされている。ここでは以下のようなサービスを提供している。
    A.点字図書館で製作された点字・録音図書の郵送による貸出
     これらの図書については、国立国会図書館刊行の「点字図書・録音図書全国総合目録」により所蔵確認できれば、所蔵している全国どこの点字図書館からでも借りることができ、製作中の情報も確認できる。ただし蔵書構成は、広く一般的なものが中心となっている。
    B.盲人用具、視覚障害者用福祉機器等についての情報提供・販売
    • 点字用紙、点字・録音図書郵送用具、点字筆記具等の用具、消耗品類
    • 盲人用カセットテープレコーダー、点字ディスプレイ、音声ワープロ等の電気・電子機器類、点字印刷機器類、拡大・触覚読書機器類
    • 施設・設備(点字タイル・案内板、誘導チャイム、音声ガイドシステム等)。また、新規の施設・設備について助言を受けることができる。
  4. 日本点字図書館
    問合せ先:電話  03−3209−0241(代表)
    FAX 03ー3204−5641(本部)
    FAX 03−3209−2431(サービス)
    FAX 03−3200−4133(用具)
    住所  〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-23-4
     日本点字図書館では、前項 3で述べたサービスの外に、下記のような様々なサービスも行っている。
    A.レファレンス・サービス:視覚障害者を対象に点字・録音図書について、全国レベルでの検索受付。郵便(墨字・点字)、電話、直接来館も可。
    直通電話 03−3209−2460 情報サービス係
    FAX  03−3209−2431
    B.テレフォン・サービス:理療関係図書、新刊墨字図書および新刊視覚障害関係図書の紹介。案内は3分間、毎週水曜日に更新。東京都の委託によるサービスである。
    専用電話 03−3232−6967
    C.視覚障害関係活字資料の収集:視覚障害に関する雑誌・図書等を収集している。新聞記事や雑誌記事のファイルも行っている。貸出は不可だが、閲覧・複写は可能。利用には予約が必要。
    問合せ先:情報サービス係
    D.専門対面リーディング・サービス:専門的文献の対面朗読サービスで、日本点字図書館に利用者登録している人を対象に、全国からの利用に応じている。1996年11月開始のサービス。登録しているボランティアは、専門職(医師、弁護士、大学教員、外国語の堪能な人等)が多く、担当者が利用申し込みの主題に合わせてボランティアを調整する。原則として、依頼者持参の専門書について、その場で相談したり、辞書をひきながら読んでもらうといった自由な朗読をしてもらえる。1回2時間単位。ボランティアとの連絡調整のため2日前までに予約が必要。
    問合せ先:プライベート・サービス係
    E.希望点訳・朗読:東京都委託サービスのため東京都在住、在勤、在学者のみを対象にしている。利用者個人の希望に応じて、本人所蔵の文献の点字・録音図書を作成する。また、点訳データ・録音資料の複製も提供。受験参考書から司法試験用資料まで、楽譜以外の図書に幅広く対応している。
    問合せ先:プライベート・サービス係
  5. てんやく広場
    問合せ先:事務局
    〒550-0002 大阪市西区江戸堀1-13-2
    日本ライトハウス盲人情報文化センター内
    電話  06−441−0015
    FAX 06−441−0039
    システム関係のQ&A
    電話  06−441−3966
     てんやく広場は、全国の視覚障害者が等しく情報摂取の機会が与えられるよう、全国の点字図書館等とボランティア・グループが協力して運営しているパソコン通信ネットワークで、提供しているサービスは以下のとおりである。
    A.点訳データの提供:パソコン点訳により1年間に 5,000タイトル以上の点訳データを収集し、累積で約20,000タイトルのデータを保有している。(1998年3月現在)  このデータの利用は有料で、下記の4種類のいずれかの会員登録が必要である。
    • プリンティング・センター
      点訳データを登録・受信できる施設、団体、ボランティアグループ。
         (年間利用料金40,000円)
    • 施設利用会員
       てんやく広場の点訳データを利用して視覚障害者にサービスをする各種図書館、施設、団体、ボランティアグループ。
      (年間利用料金60,000円)
    • 個人利用会員A
      視覚障害者のみ。点訳データの受信、目録の検索等ができる。
      (年間利用料金 6,000円)
    • 個人利用会員B
      プリンティング・センターに所属するボランティア。目録検索等の機能が利 用できる。
      (年間利用料金 2,000円)
     プリンティング・センターと施設利用会員は、引き出したデータを点字印刷して、蔵書に入れたり、個人に提供することができる。視覚障害者は、ホストシステムに直接アクセスすることにより、蓄積された点訳データから、自分の読みたい本を自由に選び、データを引き出すことができる。
    B.共同目録およびオンライン・リクエスト
     国立国会図書館から提供された点字図書・録音図書全国総合目録データベース、点字出版図書データべース、てんやく広場収納点訳データの目録を検索することにより、製作着手情報および約 200,000タイトルの所蔵データの確認ができる。また、視覚障害者は利用登録している図書館へ、オンラインにより貸し出しのリクエストメールを送信することができる。
    C.掲示板およびメール
     各種のお知らせ、いろいろなQ&A、図書情報、感想等の様々な掲示、およびバイナリデータを含むメールの送受信ができる。
  6. 社会福祉法人 視覚障害者支援総合センター
    問合せ先:〒167-0043 東京都杉並区上荻2-37-10 Keiビル3階
    電話  03−5310−5051
    FAX 03−5310−5053
     日本盲人福祉研究会と姉妹関係にある、視覚障害大学生を支援する組織で、大学の門戸開放、入学後の学習条件整備、卒業後の就職相談、社会啓発のための出版活動を行っている。このセンターでは「盲大生に対する点訳・朗読等のサービス」を行っている。サービスは有料で、原則として同研究会の会員のリクエストに応じて提供されるが、その費用の保障のため、在学中は奨学金制度の推薦を受けることもできる。
     各種試験問題、専門書・テキスト、定期試験問題等の点訳・音訳について、全国の大学から依頼や相談を受け付けている。
  7. RFB&D(Recording for the Blind and Dyslexic,Inc.)
    問合せ先:住所 20 Rosel Road, Princeton, New Jersey 08540, USA
    電話  +1-609-452-0606
    FAX +1-609-987-8116
    URL http://www.rfbd.org/
     世界最大の、専門書の録音図書と電子テキストの提供機関である。利用できる図書は次の形態のものである。  利用は個人登録制となっている。登録料は75ドル(終身会員登録料50ドルと、年会費25ドル)で、視覚障害、学習障害の専門家の証明書、または、視覚障害者のための協力ネットワーク図書館の司書の署名が必要である。
     蔵書はオンライン・カタログにより検索可能である。

(2) 聴覚障害者のために

  1. 社会福祉協議会
    問い合せ先:各自治体の社会福祉協議会
    各都道府県の聴覚障害者協会(ろうあ連盟等の名称のところもある)
    URL http://www2.tky.3web.ne.jp/~jfd/group.html
     手話通訳、要約筆記、ノートテイク等のボランティアの派遣に関する情報提供や、派遣依頼の受付を行っている。
     最近では、手書きによる要約筆記に代わるものとして、少数ではあるがパソコン要約筆記が開始されているところもある。
     しかし、内容が専門的になると一般のボランティアでは対応が難しい場合もあるので、目的に応じての依頼の配慮が必要である。
  2. 聴覚障害者情報提供施設
    問い合せ先:各地の聴覚障害者情報提供施設
     身体障害者福祉法第33条により設置されている施設で、全国に17施設(1998年1月現在)ある。ここでは手話通訳の養成、派遣業務、また、字幕、手話入りのビデオの製作や、聴覚障害者への貸出業務を行っている。ビデオの内容は広く一般的なものが多く、聴覚障害者の個人利用が原則となっている。下記 3でも、字幕付ビデオライブラリーの貸出を行っている。
  3. 茨城県の例
    茨城県立聴覚障害者福祉センター「やすらぎ」
    問い合せ先:電話  029−248−0029
    FAX 029−247−1369
    住所  〒310-0844 水戸市住吉町349-1
     聴覚障害者の生活全般を支えるため、手話奉仕員(手話通訳)または要約筆記奉仕員の派遣事業を行っており、その一環として、県内の教育機関からの派遣依頼を受け付けている。入学式や諸手続き、図書館オリエンテーション等の行事には、奉仕員を派遣するが、講義やゼミへの長期、定期的な派遣は行っていない。

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