第8章 最近のトピックスと動き

1.組織改革の動向

 現在までの9次に及ぶ定員削減や経費削減の一方で、電子図書館的機能の充実や多様化する利用ニーズに応えるため、各図書館は、学内他部局と同様、組織のあり方や業務のあり方について真剣な見直しを図っている。
 平成11年度に実施された国立大学図書館協議会図書館組織・機構特別委員会のアンケートによると、大学全体の事務一元化に伴う図書館会計事務等の見直しのほか、学内情報処理センター等や事務局情報関連部課との組織的一体化を目指す動き、分館業務の本館一元化、館内係等の再編・統合、専門員や専門職員の新設、研究開発室の設置、業務の外注化(アウトソーシング)、ボランティア等の導入など様々な取り組みが実施されている。
 特に、情報処理センター等の学内類縁組織との組織的一体化は、東京大学や九州大学の情報基盤センター(http://www.itc.u-tokyo.ac.jp/)、大阪大学のサイバーメディアセンターなどの誕生によって、大学施設のあり方の上でも一つのテーマとして注目されつつある。東京大学等の事例は、大規模大学でのあり方として一つの方向性を示しているが、今後は、中小規模大学でのあり方を求めたいくつかの試みも出てくるものと思われる。

2.遡及入力

(1)遡及入力とは

 従来、大学図書館の蔵書目録は、カード目録の形態が中心であった。しかし、図書館業務のシステム化の一環として目録業務が機械化されるにともない、この蔵書目録はデータベース化され、コンピュータで検索利用できるOPAC(Online Public Access Catalog:オンライン利用者用目録)に変化しつつある。
 通常、蔵書目録データベースは、目録業務の機械化以降に図書館に受け入れられた資料から形成される。このため、多くの図書館では、機械化以前の蔵書についてのカード目録と機械化以後の蔵書についてのOPACという2つの形態の目録が併存している。
 遡及入力とは、この機械化以前の蔵書についての目録をデータベース化していくことである。

(2)遡及入力の意義

 遡及入力により蔵書目録データベースを充実しOPACで提供することにより、従来あまり利用されなかった資料についても利用を促進することができる。
 また、蔵書目録をOPACに一元化することにより、とりわけ利用者にとっては、複数の目録を使わずに蔵書検索が可能となる、高度な検索ができる(キーワード検索や他のデータベースと連動した検索等)、研究室等からネットワーク経由により目録の利用ができるなどのメリットがある。
 一方、図書館にとっても、迅速な情報提供ができるし、資料の廃棄や移動の際でも一回の処理で所在の変更等ができるなどの利点もある。さらに、遡及入力が完了しカード目録が不要になれば、カードの作成・配列作業そのものがなくなり、カードボックスが占めていた膨大なスペースの節約が可能となる。

(3)遡及入力の対象

 全ての蔵書が遡及入力されることが望ましい。しかし、遡及入力の実施については、膨大な労力と経費を要し、かつ非常に長期の事業になることが多いため、優先順位を定め計画的に行うことが必要となる。
 各図書館の事情等にもよるが、例えば、閉架よりも開架の資料、部局図書館よりも中央図書館の所蔵資料、自然科学系よりも人文・社会科学系の資料、一般資料よりも特殊コレクション等を優先的ないし選択的に行うといった考え方もあろう。

(4)遡及入力の方法

 新規受入資料の目録業務と同じように、一般に、遡及入力は、学術情報センターの目録システム(NACSIS-CAT)を利用して行われる。学術情報センターでは、各大学の遡及入力を促進するため、標準的な目録情報である各国のMARC(Machine Readable Catalog:機械可読目録)など基盤となるデータベースの整備・充実を図っている。

(5)遡及入力の体制

 遡及入力を系統的・計画的に行うためには、通常の目録業務とは別の体制を組むことが有効である。そのため、外注化を実施ないし検討している図書館も多い。
 なお、外注化を進めるためにも、業務指針となるマニュアルを整備しておくことが必要である。

(6)遡及入力の経費

 外注化等を含め、遡及入力事業には、通常の目録業務とは別に経費が必要となる。
 経費としては、遡及入力業務に直接関わる経費(人件費等)のほか、場合によっては、貸出用の図書IDラベルや盗難防止用の装備など消耗品類等も必要となることがある。
 また、このような遡及入力経費の財源確保としては、図書館の経常経費による措置のほか、学長裁量経費の要求等の方法もあろう。
 なお、遡及入力に直接当てはまるわけではないが、例えば、学術的価値の高い資料のデータベース化事業として文部省科学研究費補助金(研究成果公開促進費)等を申請することなども考えられる。

3.電子ジャーナルの導入

(1)電子ジャーナルとは

 従来、冊子体の印刷物として発行されていた学術雑誌の内容(学術論文)が、紙に印刷されないまま出版社等のコンピュータ上に蓄積されていて、大学の研究者等は、インターネットを介して手元のコンピュータからこの論文を読んだり印刷できるようになっているしくみのこと。
 1990年代に急速に発達し、現在では有力な学術雑誌の大部分が冊子体と並んで電子ジャーナルの形で発行されている。(電子ジャーナルの形だけで発行されている学術雑誌もある。)

(2)電子ジャーナルの特質

(3)電子ジャーナルの利用料金

 主として次のような料金体系がある。

(4)電子ジャーナルの導入に伴う問題点