第7章 大学図書館の組織と業務

1.管理運営

(1)図書館長

 附属図書館の館長は、国立学校設置法施行規則第12条に基づき、その大学の教授が就任している。各学部等から推薦された候補者の中から学長が指名する場合が多いが、学長が直接指名する大学や図書行政商議会委員の中から選出される大学もある。

→  第1章1の(1) 図書館長の項参照

(2)図書館委員会

 大規模大学では、図書行政商議会と言う場合もあるが、図書館運営委員会、図書館委員会というところが多いようである。図書館運営上の重要事項を審議する機関である。委員は、各学部等から選出され、毎年度の予算決定などが重要審議事項となる。

(3)分館、部局図書館(室)

 キャンパスが分散している総合大学などでは、「分館」を置いている大学も多い。「分館」とは、文部省訓令によって附属図書館に設置されているものを指す。この他、大規模大学では、学部や研究所が図書館(室)を設置している例もある。
 近年の定員削減や事務一元化の中で、分館や部局図書館(室)との業務見直しも盛んである。

→ 第1章1の(3) 分館の項参照

(4)事務組織

 国立大学の図書館には、事務長制の大学と部課長制の大学がある。部課長制にも大規模大学の3課制、1部2課のところ、教務部等の1課になっているところなどがある。
 定員は、現在の第9次定員削減が進行中で、図書館も削減されており、係2〜3人体制が一般的となっており、組織のあり方の再構築の検討が求められている。非常勤職員の比率も高いが、徐々に経費が節減されている。

→ 第1章 1の(3) 事務組織の項参照

(5)予算

 大きく運営費と資料費の2つに分かれる。また、運営費では、開館に伴う光熱水料経費と要員人件費等の固定的経費の確保と新規事業経費の捻出がどこの図書館でも課題となっている。

(6)大学図書館の評価

 国立大学附属図書館の自己点検・評価については、平成5年3月に国立大学図書館協議会自己評価基準委員会が詳細な点検項目事例を報告書として出しており、各館とも積極的に取り組んでいる。第三者評価を行うところも増えつつある。

参考 「国立大学図書館における自己点検・評価について−よりよき実施に向けての提言−」

国立大学図書館協議会自己評価基準検討委員会 平成5年3月

(7)諸課題

 図書館の運営上の主な課題を挙げれば次のようになる。

(8)図書館協力組織

 図書館は、当初から資料の利用を介して図書館間の協力が不可欠であり、協力関係も進んでいる。その意味で、図書館は本来、競争型組織ではなく連携協力を旨とするネットワーク組織と言える。協力関係は、学問分野や地域、館種(大学図書館、公共図書館、企業専門図書室等)、国公私等設立母体等により各種の協議会や協会などの任意団体の形で構成され、1つの図書館が複数の団体に所属することも稀ではない。
 以下に、国立大学図書館に特に関連する団体を挙げる。(国立大学図書館協議会は、別項を参照)

○日本図書館協会 http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jla/
 公共図書館、大学図書館、学校図書館、専門図書館などほとんどすべての種類の図書館が参加している全国的な図書館協力組織である。機関誌「図書館雑誌」を発行している。

○国公私立大学図書館協力委員会
 大学図書館を結ぶ横断的な組織である。国立大学図書館協議会、公立大学協会図書館協議会、私立大学図書館協会の各組織から選出された委員館によって構成されており、調査研究、出版、研修・講演、国際交流等の活動を行っている。「大学図書館協力ニュース」を発行している。

○日本医学図書館協会 http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jmla/index.htm
 医学関係の大学図書館や病院図書室等が参加している。独自の相互貸借体制を組むなど古くから協力活動が盛んである。機関誌「医学図書館」を発行している。

○日本薬学図書館協議会 http://wwwsoc.nacsis.ac.jp/jpla/
 薬学関係の大学図書館や専門図書館が参加している。機関誌「薬学図書館」を発行している。

(9)関連雑誌

2.サービスの基盤的業務

(1)庶務会計

 図書館の庶務会計業務は、例えば情報管理課の総務係といったような独立した係が行っている。最近の事務一元化の流れの中で、会計業務を中心に業務が事務局に移る傾向にある。

(2)受入

 「受入」というのは、資料を図書館の資料として正式に受け入れる処理のことを言い、受入係という名称の係で行っている所も多い。その手続きの主なものは、資料の選定、発注、購入手続き、備品登録等からなる。購入は、当然、国の会計制度の中で行われ、図書館の中でも用度係的業務である。(資料の選定は、選書ともいい、大規模な図書館では、独立の係で行っているところもある。)

(3)図書・雑誌

 図書館で扱うのは、言うまでもなく、本や雑誌である。図書館では、本のことは「図書」、雑誌類は、そのまま「雑誌」あるいは「逐次刊行物」(略して逐刊とも呼ぶ)と呼ぶ。雑誌と言う言葉は、一般的には、週刊誌をイメージさせるが、図書館では、刊行頻度、一般学術の別、国内外国出版の別なく「雑誌」と言って単行書の「図書」と区別する。
 なお、一般物品に対して「図書館資料」あるいは単に「資料」という場合もあるが、この場合は、図書・雑誌のほか、ビデオやマイクロなどを含んで図書館が扱っているものすべてを指していると考えられる。
 出版物によっては、単発に発行される「図書」と逐次的に刊行される「雑誌」のどちらに区分してよいか曖昧なものもある。

(4)物品管理

 購入された図書等は、物品管理法上の物品として処理され、「備品」と「消耗品」のどちらかに区分けされる。概ね、ハードカバーの単行書は「備品」に、ソフトカバーの雑誌などは、消耗品に振り分けられるのが通常だが、(雑誌が製本された場合、備品に繰り入れられる。)
その区分けの方法は、各館で多少違う。備品に区分けされた資料の冊数が、たいていの場合、その図書館の蔵書数の基礎となる。
 また、何らかの事情からその図書館で不用となった図書の処理も物品管理法の手続きに従って行うことが必要となる。ただ、図書館としては、値段や外形上、消耗品とした場合でも、内容的な観点からも資料的価値を判断する必要があるのは当然である。
 物品管理法上で、図書を専門に管理する職として、分任物品管理官や物品供用官がそれぞれ官職指定されている。

(5)図書館資料の識別

 図書や雑誌は、一般物品と違って、一点一点の価格は、それほど高価ではないが、それぞれを区別するために書名や著者など複数の情報が会計伝票の明細として必要になるなど、一般物品の処理と若干様子が異なる。
 書名や著者等の資料にかかわる情報は、多くの本や雑誌を識別し、検索するために必要となり、図書館職員や文献研究者が、図書の分類法とともに古くから専門的にその扱いについて研究してきた分野である。
 また、図書や雑誌には、同一本や雑誌を識別するために、世界的な標準識別記号が付与されている。図書の場合は、ISBN(アイエスビーエヌ)、雑誌の場合は、ISSN(アイエスエスエヌ、イッスンなどと呼ぶ)といい、図書や雑誌の表紙の隅に印刷されている。

(6)目録

 購入又は寄贈された資料は、次のステップとして、利用者が図書館の多くの資料の中から、目指すものを探し出せるように、「目録」と言われる処理を行う。図書館で「目録」というのは、図書を実際に見ながら、その図書を物理的内容的に識別するために書名や著者、出版社、発行年、版次などを細かに記録するとともに、内容によって分類を行う作業である。

(7)NACSIS―CAT

 目録の作業は、従来、各図書館で個別に行われていた。しかし、このやり方は全国的に見ると同じ図書の目録をあちこちの図書館で重複して作ることの非効率さが問題となっていた。その後、データベースや通信技術の進歩によりそうした問題がシステム的に解決できるようになり、昭和59年ころから、学術情報センター(NACSIS)
 http://www.nacsis.ac.jp/nacsis.index.html
を中心とした学術情報システムの中のネットワークを使って共同で目録をとるようになった。
 このシステムは、図書館職員の間ではNACSIS-CAT(ナクシス・キャット)と呼ばれ、現在、国公私立を問わず全国のほとんどの大学図書館が参加している。
 このシステムの良い点は、既に存在する目録や書誌データをシステムで参照して、同一資料のデータと判断されれば、これに、自館が持っているという所蔵データを付加するだけで目録ができるという点にある。参照される書名等の書誌データは、外国や日本の権威ある大図書館で作られた機械可読形式の目録(MARC:マークと呼ばれる)のほか、参加図書館のどこかがオリジナルデータとして登録した目録データも使われる。(こうしたやり方をコピー入力と言う。また、システム上に参照できるデータがなく現物を基に各館の責任で作る方式をオリジナル入力と言う。)
 こうして作られた書誌・所在データは、学術情報センターのデータベースに蓄積され、現在は、それを基にして、全国の大学図書館で何を持っているか、一般にもわかるように、インターネット上にも無料で公開されている。これは、Webcat(http://webcat.nacsis.ac.jp/)と呼ばれている。

(8)OPAC

 各館で作られた書誌所在データは、一方で、各大学の図書館システム(学術情報センターのシステムに対して、ローカルシステムと呼ばれることもある)にも蓄積され、各館での資料の購入手続きや書架管理、利用者用目録検索等に利用される。
 利用者用の目録は、従来は、カード目録の形で提供されていたが、現在は、パソコン端末からオンラインで検索できる形式に変わっている。これは、一般に、OPAC(オーパック:Online Public Access Catalogの略)と呼ばれている。
 ただ、コンピュータで検索できるのは、当然書名や保管場所がデータ化されたものに限られ、多くの図書館では、カード時代の目録がデータ化されずに残っている。また、データ化されていても、全国的なNACSIS-CATシステム以前に自前の図書館目録システムで作ったもので漢字データが入っていなかったり、記述のフォーマットが違うなどの理由から、一貫した検索システムにできないなど不充分な部分もある。
 こうした書誌や所在を表すデータは、基本データとして今後図書館をシステム化し、電子図書館的機能を発揮していくためにはぜひとも必要なデータで、過去に遡ってこれらのデータを入力するいわゆる「遡及入力」の推進が求められている所以である。

(9)装備

 図書や雑誌は図書館の蔵書として「受入」されると、その資料を今後、利用者に利用してもらうために管理面からいくつかの物理的処理が施される。この作業は、「装備」と言われる。
 図書の場合、まず、図書館の蔵書であることを示す蔵書印の押印、備品である図書一冊一冊を区別するための登録番号付け、貸出時に必要となるバーコードラベルの貼付、書架上の順番を表すため本の背に貼る請求ラベルの貼付、その他図書の無断持ち出しを防ぐための処置などである。
 雑誌の場合は、最初は消耗品として簡単な受付印で済まし、製本した段階で、もう一度図書と同様の処置をする。

(10)配架等

 これらの手続きが済んだ図書や雑誌は、図書館の書架に並べられたり(配架)、研究用資料として研究室に長期貸出される。この処理は、概ね閲覧係や資料サービス係と呼ばれる貸出や書架管理、利用者管理を主な任務とする係で行われる。研究室に貸し出された図書は、教官が他の大学に転任したり、退職や大規模な学科変更などの際に、一括して返却されることが多く書架管理上の工夫が特に必要である。

(11)雑誌

 図書の場合は、一冊一冊に固有の書名(タイトル)があるが、いわゆる雑誌の場合には、一つの共通するタイトルに対して号をおって発行されるため、目録の方法が図書と異なっている。その他、年間の継続契約が必要であったり、一度受け入れた後も管理上の必要から製本する場合があるなど図書と違った一括的な処理がある。
 係としては、受入係の担当となっていたり、システム関係の係の担当になっていたりする場合もある。受入係が担当していたところで、受入係と目録係を、図書係と雑誌係に再編し、雑誌を独立した係で担当するところも多い。

(12)外国雑誌

 大学の附属図書館であることから、外国の図書や雑誌の比重が多い。外国雑誌を含む学術雑誌は、一般に、単に研究情報を相互に交換するためだけでなく、自己の研究実績を内外に宣言し証明する手段ともなっており、研究者にとっては必須の資料である。
 しかし、この外国学術雑誌の購入については、雑誌原価の値上がりと為替変動による価格の不安定さによる慢性的な予算不足という経費上の問題を抱えている。

(13)図書館業務システム

 国立大学図書館へのコンピュータ導入は、1972年大阪大学附属図書館が最初とされる。
 当初は、図書館職員がアセンブラ、コボルといったプログラミング言語により自前で業務システムを組む例も見られた。その後、汎用コンピュータやオフィスコンピュータの提供業者が図書館職員と打ち合わせながら、個々の図書館に適合した個別システムを開発提供した時期があった。
 更に、その後、データベース技術の進歩とともに、汎用コンピュータ上で図書館業務システムのパッケージ化が行われ、個々の図書館システムは、これをカスタマイズ化するという形で導入する例が一般的となった。現在は、その後のダウンサイジング化、ネットワーク化、オープンシステム化の流れの中で、ワークステーションやパソコンシステムが主流となっているが、各館システムの開発を業者のパッケージソフトのカスタマイズ化によって行うというあり方は変わっていない。
 近年、国の電算機借料期間が4年から5年に延長されたことによる導入経費の問題や加速する新製品出現に伴う導入機種の陳腐化への対応、機種更新に伴う業務システムの継続性維持など新たな課題が浮上しており、図書館業務システムの導入開発のあり方を今後も検討する必要がある。

3. 利用者に対するサービス業務

 大学図書館の主たるサービス対象は、学内の学生や研究者・教官である。大学の図書館は、その学習活動や研究活動という知的活動を支援促進することを大きな任務としている。
 そして、そのための具体的サービスとして、貸出や複写等による「資料の提供」、閲覧席等の「場所の提供」、レファレンス等の「人的サービス」などを行ってきた。
 これらがサービスの柱であることに今も変わりないが、一方で近年の大学をめぐる「国際化」や「大学院化」、「公開」の動きの中で、増加する外国人留学生への対応、大学院生への配慮、地域市民の生涯学習ニーズへの対応など図書館のサービス対象は、多様化と広がりの傾向を見せている。
 また、いわゆる「情報化」の進展の中で、伝統的な紙メディアに対して、パッケージの形やネットワークを流れる形のデジタル情報の比重が増加していること、及び、情報通信技術の進歩によって、ネットワークを介した情報資料の遠隔提供が可能になったことなどにより情報システムを基盤としたサービス形態の強化・充実が新たに求められるようになった。(「電子図書館的機能」)

(1)資料の提供

1)閲覧

 図書館は、出版物をはじめとした資料を集めてそれを展示し、利用者が探して自由に見ることができるようにしている。通常、これを閲覧サービスと言う。
 この閲覧サービスのため、閲覧席を設置するとともに、利用者が自由に書架に見ることが出来る開架式書架を全面的に取り入れるところもある。
 また、大きな図書館で、利用者が自由に入れない書庫(閉架式書庫)があるところでは、利用者の求めに応じて、本を書架から出してくる出納という業務もある。

2)開館時間

 図書館の開館日数や開館時間は、図書館サービスの基本的な条件である。夜間開館時間の延長や、土曜日・休日の開館を実施する例も増えている。実施については、要員の手当や光熱水料に係る経費が必要となる。最近は、外注によって行う例もある。

3)貸出

 資料の利用としては、館内での閲覧サービスのほか、図書館外に資料を貸し出すサービスもありポピュラーなサービスとなっている。しかし、国立国会図書館や都立中央図書館など原則として館内閲覧のみの図書館もある。閲覧サービスは、カウンター業務として、従来図書館員が主に行う仕事と考えられていたが、定員削減の中で、近年は、自動貸出装置の導入や外部委託などの動きも見られる。

4)文献複写

 具体的には、館内に複写機を設置してサービスするもので、運用にあたっては著作権法に留意する必要がある。
 著作権法第31条では、図書館等における複製の条件として、図書館資料を「利用者等の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分の複製を一人につき一部提供する場合」や「図書館資料の保存のため必要がある場合」などが規定されており、その範囲で運用することが必要である。
 また、学外者等から文献複写を受託した場合の料金については、文部省事務次官通知(平成元年)により決められている。

5)図書館間相互貸借

 今日の大量出版の時代では、どんな大図書館も、すべての利用者の希望する資料を自館に備えることは不可能である。図書館は、比較的古くから、所蔵する資料を相互に利用しあってサービスする相互協力体制を作り上げてきた。
 資料の相互貸借は、その大きな柱であり、利用者の求めに応じて自館にない資料を他館から借りて閲覧に供したり、雑誌論文を複写物の形で取り寄せて提供するサービスを行っている。こうした複写物のやり取りや図書資料の現物貸借などの相互協力業務は、近年、遡及入力が各館で進むに伴って各館とも比重が増している。
 相互貸借業務は、他館への依頼と他館からの受付からなっている。一般に、蔵書の多い大規模図書館ほど他館からの受付件数が多くなる傾向が見られる。

6)NACSIS-ILL

 相互貸借業務も、学術情報センターを中心とした全国の国公私立大学図書館を結ぶネットワークの中でシステム化されている。NACSIS-ILL システムと言われるものである。
 ILL(アイエルエル)とは、Inter-Library-Loan、即ち図書館間相互貸出の略であり、NACSIS-CATにより形成される全国総合目録データベースを基礎にした相互協力システムである。
 現在は、世界的に雑誌論文の提供が迅速なことで知られる英国のBLDSC(http://minos.bl.uk/services/bsds/dsc/)や国内最大の所蔵を誇る国立国会図書館(http://www.ndl.go.jp/index.html)との間でも、このシステムにより文献のやり取りが可能となっている。
 国立学校等間の文献の複写等に係る経費の清算は、このシステムの情報を元に予算の振替という形で行われている。また、公私立大学から国立大学への申し込みの場合、徴収猶予許可制度によって事前申請があればその都度の前払いがなくても利用できるようになっている。

7)他図書館の紹介サービス

 相互協力の一環として、関連図書館への紹介状発行や共通閲覧証の発行など、他図書館への案内・紹介サービスも多くの図書館で行っている。

(2)施設空間の利用

 図書館には、資料を保管展示するための書架やそれを閲覧するための閲覧席を配置する空間が必要である。
 しかし、近年は、単に、本と閲覧席があるだけのスペースではなく、学生のライフスタイルに合わせた知的空間にふさわしいアメニティー空間とする動きも出てきた。
 また、ビデオやレーザーディスク、カセット、レコードなどの視聴覚資料、フィルムやフィッシュ等のマイクロ資料、CD-ROMや最近のDVDなどのコンパクトディスクに収められたパッケージ型のデジタル資料、インターネット上に存在するネットワーク型のデジタル情報など新しいメディアの出現とともに、これらの情報を利用するための機器の設置と空間的配慮が、閲覧席や書架に加えて、新たに必要になってきた。こうした動きの中で、ビデオ資料等が利用できる視聴覚コーナーの充実のほか、自由利用のパソコンを情報センターと協力して館内に設置したり、閲覧スペースに情報コンセントを設置したり、マルチメディアコーナーを充実したりするところが多くなっている。
 こうした書架の管理や施設空間の管理は、サービス部門の閲覧係等が主として行っている。

(3)資料の保存

 図書館の種類規模を問わず、ほとんどの図書館での悩みが資料保管スペースの確保の問題である。図書館はそもそも資料を収集保存することを前提にその提供サービスを展開している。毎年、図書や学術雑誌を受け入れており増加するのは当たり前といえるが、大学図書館特有の事情もある。その一つが、研究室配置の研究用資料である。研究用資料は、教官研究費で購入され概ね教官研究室に長期的に貸し出されるが、研究室が満杯になったり、退官時には一括して返却される。そのためのまとまった保管スペースをあらかじめ確保できる余裕のある図書館は少なく、多くの図書館が書架スペースの狭隘さに悩んでいる。
 また、資料の廃棄等の処理は、多品種大量型物品である図書資料という事情から一連の手続きが実務上かなり煩瑣なものとなり、内容の判断が必要なこととあいまって、なかなか効率化されない現状である。
 近年は、大学共同の保存図書館の構想も検討されている。
 なお、収納のための書架方式として、通常の書架による開架式の書架や積層式書架、電動等による可動式の集密型書架などがあり、これらは収納効率や経費や使い勝手などに特徴の違いがある。最近は、完全自動型の自動化書庫の導入に踏み切る図書館の例も私立大学等の一部に見られる。

(4)レファレンス

 図書館では、所蔵する多くの資料の中から利用者が目的の資料を探し出せるようにカタログやOPAC等の道具を用意するとともに、独自のカウンターを用意して利用者の資料探索を支援する業務を行っている。これは、レファレンス、あるいは参考調査などと言われている。
 この業務は、利用者が学習レポートの作成や研究上の必要から行う文献収集を支援するもので、具体的には利用者が調べたいテーマに対応する図書や雑誌記事等を、求めに応じて検索・探索し情報提供することを主な内容としている。
 この場合、提供する情報内容は、利用者の知識条件により、違ってくる。例えば、研究者の場合は、すでにほしい文献がはっきりしていて所在が知りたいあるいは文献を入手したいという場合が多いが、学部学生の場合には、そもそも図書館の使い方や文献の探し方など利用指導的なサービスが必要になる。
 一般的には、探したい資料はわかっているがその所在場所がわからないという所在を聞かれる場合が多く、これは、そのまま、NACSISーCATで他館の所蔵を検索し、取り寄せを依頼するという流れにつながるところから、相互貸借業務との繋がりも深く、同じ係で処理している場合も多く見受けらる。

(5)調査用資料

 利用者からの質問に応えるために、NACSISの検索端末を利用するとともに、参考図書、二次資料といわれる調査・検索用の資料を参考カウンターの近くに配置して、文献調査や所在調査を行う。
 そうした調査用の資料は、大図書館の所蔵目録からテーマ別図書リスト、テーマを表すキーワードから雑誌類の記事を検索するための雑誌記事索引といわれるもの、更に特殊なものでは、論文記事を引用関係から検索するサイテーションインデックス(Citation Index)といったものまで様々な資料があり質問を受けた職員はこれらを駆使して利用者の質問に答える。これらの資料はレファレンス担当の職員にとって必須のツール(道具)となっている。一般にはあまり馴染みがない資料群だが、情報探索にはきわめて有用なものである。
 このほか、百科事典や辞書なども参考図書として、一般図書とは別の低書架に並べられることが多い。
 これらの参考図書や二次資料といわれる資料は、CD-ROMやネットワーク上で電子的に利用できるようになってきて利用者からの相談にはこれも駆使することになる。

(6)情報検索サービス

 当初は、各種の調査用資料は、印刷体で出版されていたが、情報技術の進歩とともに、CD-ROM形態や電話回線を使ったオンラインや学内LANやインターネット等のネットワークによって提供されるようになってきた。まず、利用されるようになったのがオンライン情報検索システムといわれ、情報専門機関が大型コンピュータに学術雑誌の記事情報をデータベースとして蓄積しそれを電話回線等でオンラインで繋いで検索する方式がよく行われるようになった。
 代表的な例では、科学技術振興事業団科学技術情報事業本部(JICST)http://www.jst.go.jp/JICST/が提供する科学技術関係の情報、米国医学図書館(NLM)http://www.nlm.nih.gov./nlmhome.htmlが提供する医学関係のデータベース、米国ケミカルアブストラクツサービス(CAS)の提供する化学関係データベースなどがよく知られており、これらは今でもインターネット等を介してサービスされている。
 電話回線を使って検索する方式では、通信料金がかかるため、利用者が直接検索するのではなく、参考業務の一環として操作になれた図書館員が代行検索するというのが一般的な形だった。
 この方式に続いて出てきたのが、CD-ROM検索といわれるものである。
 これは、データベースの内容がコンパクトディスクに収納されたもので、各館はこれを購入し図書館備え付けのPCで利用者が自由に検索できるようにした。この方式の良いところは、利用者は1件1件の検索に対する利用者の料金が不要になるということであった。しかし、館内の特定の機器で利用してもらうため、利用人数が限られる、利用のためには図書館まで足を運ばなければならないなどの欠点があった。
 そのうち、LANの普及とともにCD-ROMサーバシステムが出現し学内LANを通じて複数の利用者が同時アクセスできるようになり、今日一般的な方法の一つとなっている。
 しかし、これらのデータベース検索は、徐々にインターネットのWebページから利用者が直接検索できるようになっており、外部機関ベータベースの利用方法は今後もなお変化していくものと思われる。


参考資料


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