近年、大学を取りまく状況は、教育研究の高度化・情報化・国際化の進展、人々の生涯に渡る学習要求の高揚などを背景に、大きく変化してきている。国立大学の施設整備は、これらの変化に対応するため、大学審議会、学術審議会等の答申、大学設置基準の大綱化を踏まえて、改善されることを求められている。
この数年の補正予算等によって、国立学校施設の新営、増改修がなされ、一定の改善が図られたところであるが、平成8年3月発行の「学校建築年報:国立学校編」の記述によると、国立学校の施設は、一般的に改修を必要とする建築後20年以上経過した老朽施設の数が、全体の約50%に達していること、また、大学院生、留学生、研究生の増加、実験研究設備や情報機器の設置増などによる狭隘化の進行が指摘されている。
また、平成11年度施設担当部課長会議では、学内ニーズの掌握、効率的な施設運用を推進するため米国の例などを参考にしながら、審査・管理・調査・提案することの大切さについて指摘があり、特に、概算要求にあたって留意する点として、「百年建築の推進」と言う観点が打ち出され、現在の建物を百年使用するための改修・補修の計画を含めた要求とする必要が強調された。
(2)国立大学図書館施設の状況と国立大学図書館協議会の対応
国立学校施設の老朽化・狭隘化の状況は、教育研究の支援装置であり、情報化の最先端の波を受け、膨大な学術資料・情報の蓄積をはかる図書館において、より一層深刻に顕在化している。
平成3年第38回総会において、国立大学図書館協議会は、「図書館建築に関する報告」(国立大学図書館協議会図書館建築基準に関する特別委員会:平成3年6月)を提案し、今後10年間程度の図書館機能の変化の予測と、それに伴う基準面積の増加を積算し、状況の改善に向けて考え方を明らかにした。
同報告は、特に考慮すべき新しいスペースの要素として、以下のような内容をあげている。
国立学校特別会計予算は、国立学校施設を整備するために文教施設整備費を設けている。文教施設整備費は、大臣官房会計課と文教施設部が所掌し、次のように細分されている。
(1)文教施設費[文教施設部]
国立学校建物の新・増・改築及び大型改修、基幹整備及び環境整備等を行うための経費で、概ね一件2,500万円以上の工事費
(2)各所新営費[会計課]
国立学校建物の新・増・改築、改修、環境整備などで、概ね一件2,500万円未満の工事費
(3)病院特別医療機械整備費[会計課]
(4)大型特別機械整備費[会計課]
国立学校の教育・研究に供する設備のうち、概ね一件1,000万円以上の設備で、建物に附帯して据え付けられ施設としての性格を併せ持つ設備の購入費
(5)一般工事費[会計課]
国立学校建物の経常的修繕に要する工事費
(6)不動産購入費[会計課]
(7)施設災害復旧費[文教施設部]
国立学校施設が、暴風、豪雨、豪雪、地震、火災等により被災した場合の被災施設の原形復旧又は従前の効用回復のための工事費
(8)特別施設整備費[文教施設部]
国立学校における教育研究環境の改善・充実を図るため、国立学校の施設のうち、老朽化・狭隘化が特に著しい校舎等について、緊急かつ計画的に整備を行うための工事費
(9)附帯事務費[会計課、文教施設部]
(10)防火施設整備費[文教施設部]
国立学校の学生・教職員等の生命及び身体並びに施設・設備を火災による災害から未然に防止し、又はその被害を最小限にとどめるため、消防法等により設置・維持が義務づけられている消火設備、警報設備、避難設備及びその他の消防用施設等の整備費
(11)附帯調査費[会計課、文教施設部]
附帯設備は、所謂「建新(たてしん)」と呼ばれるもので、下記の通りその範囲、単価について、定められている。
(1)附帯設備の範囲
文教整備費対象の附帯設備とは、建物の新営または改修に伴って、必要となる下記のような設備である
(2)附帯設備の単価
(単位:千円/u)
国立学校建物基準積算面積算出表は、「国立学校施設実態調査実施要領」の別冊資料であり、平成11年度適用分から改定された。この表は、「国立学校建物整備のために定めた現行における必要最小限のものである」と規定され、大学図書館は施設調査単位番号「6110」に、下記のように算出式等が示されている。(平成11年4月現在)
算出式
1U+2G+5.3(R×1.5−0.1U−0.16G)+300
最後の300uは、本館の場合の加算
注)
電子図書館的機能の整備を実施する場合等の加算
0. 3U+0.2G+20(+170)( )内は本館の場合
加算の要件
- 電子図書館的機能の整備を実施する場合
- 地域との連携を図るための情報発信又は地域社会への施設開放を促進するための整備を実施する場合
- R=当該団地の全蔵書冊数(単位千冊、千冊未満切り上げ)
- U=当該団地の移動後の学部、一般教養、専攻科、別科、短大部の学生の完成定員
- G=当該団地の大学院生完成定員
- ( )内が負数となる場合は0とする。なお、( )内の算定結果に少数未満の端数が生じた場合は、少数点第1位で四捨五入する。
- 図書館本館の加算は、大学1カ所とし、算出式に別途加算する。
(2)基準面積算定式改訂試案
前述の通り、平成3年、同試案は第38回国立大学図書館協議会総会において、「図書館建 築に関する報告」として、図書館建築基準に関する特別委員会により提案されたものであり、 算出式は下記の通りである。
注)
算出式
1. 8U+3.5G+5.3(R×1.5−0.21U−0.336G)+80T+500
最後の500uは、本館の場合の加算
- R=当該団地の全蔵書冊数(単位千冊、千冊未満切り上げ)
- U=当該団地の移動後の学部、一般教養、専攻科、別科、短大部の学生の完成定員
- G=当該団地の大学院生完成定員
- T=受入雑誌タイトル数(単位千タイトル、千タイトル未満切り上げ)
- ( )内が負数となる場合は0とする。
- 図書館本館の加算は、大学1カ所とし、算出式に別途加算する。
*第5章の参考文献
同書は、昭和57年の刊行から5度目の改訂であり、その章立ては、財政と予算制度、国立学校文教施設整備予算の概要、文教施策と施設整備、特別施設整備事業、国立学校施設整備事務処理、施設整備の企画・計画、施設整備の予算要求と執行、施設整備関係資料、施設整備に係る機構整備からなっている。
施設関係の職員の間では、愛称「茶本」と呼ばれ、日常の執務に使用されている。
同書の特徴は、図書館に関する法規の総覧であると同時に、図書館に関する基準、宣言、要綱、要項等の総覧でもある。施設関係の収録資料の中には、「大学図書館施設計画要項」も含まれている