第4章 国立大学の会計

1.予算

(1)国立学校特別会計

 国立大学の予算は、昭和39年度から国立学校特別会計の予算として編成されている。
 国立学校の管理運営は一般の行政事務と異なる点が多く、一般会計で経理することは実情にそぐわないので、予算の効率的、弾力的な執行ができるよう、一般会計から独立した特別会計制度が適用されたものである。
 国立学校特別会計の歳入は一般会計からの繰入金、授業料、入学料、検定料、病院収入等であり、歳出は国立学校の運営費、施設費等である。(国立学校特別会計法第三条)
 予算の編成手続は財政法第3章第2節に規定されており、細部は予算決算及び会計令(予決令)に規定されている。

  1.  概算要求には、新規概算(新規事項)と基準概算(経常的経費)とがあるが、通常、概算要求と呼ばれるのは新規概算のことで、新しい施設・設備の要求や新たな組織機構・定員の要求である。
     5月中旬から6月中旬にかけて文部省から概算要求書提出についての通知が国立大学に送付され、7月上旬には国立大学から文部省に概算要求書が提出される。それに先立って経理担当部門が学内の概算要求事項をとりまとめることになるので、早い大学では前年度の11月頃までに図書館としての概算要求を出さなければならないこともある。さらにそれに先立って図書館委員会等で審議・了承されていなければならないので、例えば平成16年度の概算要求を平成14年の夏頃には固めておく必要がある場合もある。
     概算要求事項は大学内で順位付けされるので、図書館から経理担当部門に出しても、最終的には文部省には提出されない事項もある。
     文部省は8月31日までに概算要求書を大蔵省に提出する。
     この場合も大学から提出された事項がすべて大蔵省に送られるわけではない。
  2.  大蔵省の査定9月上旬から中旬にかけて文部省は大蔵省に対して説明を行う。組織機構・定員の要求については並行して総務庁に対しても説明が行われる。
     大蔵省議を経て大蔵原案が作成され12月下旬に閣議に提出されるとともに各省庁にも内示される。
     この内示に対して復活折衝が行われる。(財政法第18条)
     復活折衝は、各局連絡課長折衝、局長折衝、事務次官折衝、大臣折衝、党折衝と進められていく。復活折衝を経た大蔵原案は閣議の承認を経て政府原案となる。文部省はこの政府原案を国立学校に内示する。
  3.  予算の提出
     政府原案は1月中に国会に提出される。(財政法第27条)
     予算が成立すると内閣は各省庁の長に歳入歳出予算を配賦する。(予決令第16条)
     文部大臣は、内閣から配賦された予算に基づき、国立学校の支出負担行為担当官に支出負担行為計画の示達を行う。(予決令第39条)
     人件費、校費等の経常的経費は年度始めに「当初示達(当初配分)」として示達される。赴任旅費、一般設備費等の、国立学校からの要求に基づく経費はその都度「追加示達(追加配分)」として示達される。
(2)大学図書館関係予算

 文部省学術国際局学術情報課大学図書館係所掌の予算である。

  1. 大学図書館専門職員研修経費
  2. 図書館経費
    図書館維持費、図書館業務合理化経費(電子計算機維持費)、図書館特別業務経費(外国雑誌センター業務経費を含む)、マイクロフィルム撮影等経費、図書館機能高度化経費(電子図書館システム経費を含む)からなる。
  3. 図書館設備費 図書購入費、図書館高度化設備費からなる。
  4. 実習施設等設備費
  5. (項)研究所 図書購入費
  6. (項)施設整備費 大型特別機械整備費
 大学図書館における図書・雑誌は設備(物品)として購入されている。したがって文部省予算においても図書購入費は設備費として計上されている。
 時間外開館のために非常勤職員を雇用している図書館にはその賃金が配分される。
 また文献複写で歳入をあげた場合は歳入見合いの予算が配分される。

(3)教育研究経費

1)校費
 最も基幹的な経費であるが、平成12年度から積算方法が改善された。
平成11年度までは、「教官当積算校費」:教官の職種(教授、助教授、講師、助手)別に「博士課程、修士課程、学科目」の分類と「実験講座、非実験講座」の分類を組み合わせて単価設定「学生当積算校費」:学生の区分(博士課程、修士課程、学部)別に「文科、理科、医科、教育」の分類により単価設定
 平成12年度からは、「教育研究基盤校費(教官数積算分)」:教官の職種別に平成11年度までの修士課程・非実験に単価を統一「教育研究基盤校費(学生数積算分)」:学生の区分別に平成11年度までの文科に単価を統一「教育研究基盤校費(大学分)」
 この結果、教官当積算校費に対応する教官数積算分と学生当積算校費に対応する学生数積算分の予算額が従来の約3分の1程度に縮減され、新設された大学分が大きい比率を占めることになった。
 この措置は大学内における配分方法の変更を直ちに求めるものではないとしているが、従来、ほとんどの大学では教官当積算校費・学生当積算校費の一定割合あるいは一定額を図書館経費に充当していたので、図書館経費の積算根拠を見直す必要が生じている。

2)教育改善推進費(学長裁量経費)
 学長のリーダーシップ発揮の環境整備のため、年々増額が図られている。
 特別コレクション等の図書購入費や図書館の施設・設備整備費に活用することにより図書館経費を補うことができる。

2.物品の管理

 大学図書館の図書・雑誌は、基本的に事務机や鉛筆などと同様に、物品として管理される。

(1)物品管理機関

 各省庁の長を管理機関とする。(物品管理法第7条)
 各省庁の長は、物品管理官に物品管理事務を委任する。(物品管理法第8条)
 各省庁の長は、分任物品管理官に物品管理官の事務の一部を分掌させる。(物品管理法第8条)
 物品管理官(分任物品管理官を含む。)は、物品出納官に物品の出納及び保管に関する事務を委任する。(物品管理法第9条)
 物品管理官は、物品供用官に物品の供用に関する事務を委任する。(物品管理法第10条)

(2)物品管理手続

  1. 取得物品管理官は、契約等担当職員に対して物品の取得のために必要な措置を請求する。(物品管理法第19条)
  2. 供用 物品供用官は、物品管理官に対して物品の払出しを請求する。(物品管理法第20条)
  3. 保管・出納 物品は常に供用できるよう良好な状態で保管される。物品出納官は、物品管理官の命令を受けて物品を出納する。(物品管理法第22条〜第24条)
    図書館の図書・雑誌は、物品管理法上は鉛筆や事務机等の一般物品と同様に扱われるとはいえ、その性格は一般物品と異なり、基本的に一冊一冊の内容(情報)に価値があり、代替がきかない。また、利用者に貸出もするし、他の図書館との相互貸借もする。物品管理法を厳格に適用すると、このような運用がむずかしくなることもあるので、柔軟な対応が必要である。

3.支出負担行為と支出

 支出負担行為制度は、契約を行う担当官の職分と責任を明確にするとともに、予算執行の適正化を図るために、昭和24年に採用された制度である。
 支出負担行為とは、支出の原因となる契約等の行為をいう。(財政法第34条)
 支出負担行為をしようとするときは支出負担行為決議書を作成する。
 支出官は支出負担行為決議書に基づき支出をする。
 通常、大学図書館では、書店に図書・雑誌の代金を支払おうとするときは、書店から提出された見積書等に基づいて支出負担行為決議書を作成し、それを大学の経理担当部門に提出する。書店への代金支払いは経理担当部門からなされる。

4.外部資金・科学研究費補助金

 近年、民間会社等と国立学校との共同研究が盛んになり、民間会社等から教育研究のための資金が国立学校に入ってくるようになった。また、科学研究費補助金の予算も毎年伸び続け、平成11年度には総額で1300億円を超えた。
 これらの資金は教育研究を目的としたものであるが、教育研究を支援する施設である大学図書館においてもこれらの資金を積極的に導入して学生用図書の充実や遡及入力事業などに充てるべきである。
1)奨学寄附金(委任経理金)
 奨学を目的として受入れる寄附金で、国は寄附者に反対給付を行う義務を負わない。(片務契約という。)
 会計年度、費目(人件費、物件費、旅費等)の制約を受けない。
2)科学研究費補助金
 学術振興のための助成金で、科学研究費、研究成果公開促進費、特定奨励費、創成的基礎研究費、COE形成基礎研究費、特別研究員奨励費に区分されている。
 附属図書館長等を代表者として教官による研究グループを形成して申請する必要がある。

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