第3章 職員の服務・給与・勤務時間

1.服務

国立大学附属図書館の図書館職員は国家公務員であって、他の国家公務員同様、国家公務員法が定める服務上の規律を守らなければならない。この規律は日本国憲法第15条に規定している「すべて公務員は、全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない。」という精神に基づいている。

(1)服務上の規律の種類

国家公務員の服務上の規律は国家公務員法に次のとおり規定されている。

1)宣誓の義務(国家公務員法第97条)
2)職務専念義務(国家公務員法第101条)
3)法令に従う義務(国家公務員法第98条)
4)上司の職務上の命令に従う義務(国家公務員法第98条)
5)官職信用保持義務(国家公務員法第99条)
6)守秘義務(国家公務員法第100条)
7)争議行為の禁止(国家公務員法第98条)
8)政治的行為の制限(国家公務員法第102条)
9)私企業等への関与制限(国家公務員法第103条・第104条)

(2)懲戒

国家公務員としての義務に違反した職員は処罰を受ける。(国家公務員法第74条・第82条−85条並びに人事院規則12−0)

2.給与

国家公務員の給与は、職員にとって基本的な勤務条件であるとともに、その費用の負担者である国民にとっても重要な関心事である。したがって国家公務員の給与は国会の直接の決定に従うという「給与の法定主義」の原則によっている。また、その給与が社会一般の情勢に適応するように、人事院は事実の調査研究を行い、国会と内閣に対して給与改定の勧告を行う。(国家公務員法第28条・第63条・第67条、給与法第3条・第24条)
これを人事院勧告と言い、省略して「人勧(ジンカン)」とも呼ばれる。
また、国家公務員法第63条では、国家公務員は職階制(職務の種類及び複雑と責任の度に応じて分類された官職)に応じて給与が支給されるとしているが、いまだに実施に至っていない。その代わりとして給与法に規定する職務の分類(級別定数の職名)が適用されている。総務、経理等の行政職員を「一般職員」、図書館の専門的職員を「図書館職員(俗に「マル図(マルト)」)」と呼ぶのは、級別定数の職名である。

(1)俸給

「俸給」は最も基本的な給与であり、いわゆる「本給」に相当する。俸給表に定める俸給(狭義の俸給)と調整額が含まれるが、扶養手当等の諸手当は除く。俸給表は職務の種類に応じて9種類、17表に区分されている。図書館職員には行政職俸給表(一)が適用される。
 初任給、昇格、昇給等の基準は人事院規則9−8に規定されている。
 級別定数(人事院規則9−8第4条)は組織ごとに人事院指令で定められる。これは給与制度のひとつであって定員制度とは異なる。一般職員、技術職員、図書館職員、部長、課長、係長、教授、助教授等は級別定数の職名である。
 図書館職員は、係長で6級まで、図書館専門員で7級まで昇格させることができる。(文人給第175条)
 調整額・特別調整額については給与法第5条・人事院規則9−6、給与法第10条・人事院規則9−17に規定されている。

(2)手当

 手当には次のようなものがある。

3.勤務時間

 勤務時間と休暇は、勤務条件の中で、給与と同様に重要なことがらである。特に近年、社会意識の変化に伴って、総労働時間の短縮や時機に応じた休暇制度の導入に対する関心は強くなっている。
 このような背景のもとに平成6年「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律」(勤務時間法)が制定、施行された。勤務時間法の主な措置内容は次のとおりである。

1)1週40時間勤務の明定
2)4週8休原則の明示
3)休日に勤務した場合の代休制度の新設
4)介護のための休暇制度の新設
5)フレックスタイム等の法定化

(1)勤務時間

1週間の勤務時間は40時間である。(勤務時間法第5条)
1日の勤務時間は8時間である。(勤務時間法第6条)
国立大学職員の週休日は日曜日及び土曜日である。
勤務時間は午前8時30分から午後5時までである。
休憩時間は午後0時15分から午後0時45分までである。
休息時間は午後0時から午後0時15分までと午後0時45分から午後1時までである。
(文部省に勤務する職員の勤務時間、休暇等に関する規程(文部省訓令33))

 週休日の振替については勤務時間法第8条・労働基準法第35条に、休憩時間については勤務時間法第9条・労働基準法第34条・人事院規則15−14に、休息時間については人事院規則15−14に、超過勤務については勤務時間法第13条と「国家公務員の労働時間短縮対策(平4・12・9 人事管理運営協議会決定)」に規定されている。また、平成9年に男女雇用機会均等法が成立したことによって女子保護規定(時間外・休日労働の規制、深夜業の原則的禁止)は撤廃された。
 ただし妊産婦については、当人が請求した場合には、深夜勤務をさせてはならない。(人事院規則10−7第6条)

(2)休日

 勤務時間法の休日とは国民の祝日に関する法律に規定する休日に年末年始の休日(12月29日から翌年の1月3日)を加えたものを指す。(勤務時間法第14条)
 休日には勤務を要しない(職務専念義務の免除[職専免])。
 休日に勤務に就いたときは、1)代休日が与えられる(勤務時間法第15条)か、2)休日給が支給される(給与法第17条)。

(3)休暇

1)休暇
 休暇には、年次休暇(勤務時間法第17条)、病気休暇(勤務時間法第18条)、特別休暇(勤務時間法第19条)、介護休暇(勤務時間法第20条)の4種類がある。
 年次休暇は、公務運営に支障がある場合は除き、理由を問われることなく使用できる休暇で、一般的には休息、娯楽等のために使われる。
 病気休暇は、負傷または疾病により勤務できないときに認められる休暇で、期間に制限はないが、90日を超えると俸給が半減されるので、この期間をもって休職とする例が多い。
 特別休暇には次の15種類が定められている。(人事院規則15−14第22条)
  1. 選挙権等を行使する場合
  2. 国会、裁判所等へ出頭する場合
  3. 骨髄移植のため骨髄を提供する場合
  4. 被災者支援活動等を行う場合
  5. 結婚する場合
  6. 産前6週間
  7. 産後8週間
  8. 授乳等を行う場合
  9. 妻が出産する場合
  10. 親族が死亡した場合
  11. 父母の追悼行事を行う場合
  12. 夏季休暇
  13. 災害で住居が滅失・損壊した場合
  14. 災害・事故で出勤が困難な場合
  15. 災害で退勤が困難な場合
 介護休暇は、配偶者、父母、子、配偶者の父母を介護する場合に認められる休暇で、他の休暇が有給であるのに対して給与が減額される。

2)休職等
 休職とは、心身の故障のため長期の休養を要する場合、刑事事件に関し起訴された場合等に任命権者が行う分限上の処分である。休職の場合はその職員は職員としての身分は保有するが、定員外とされ、後補充を行うことができる。(国家公務員法第79条)
 専従許可とは、登録された職員団体の役員として専従する場合に所轄庁の長から与えられる許可である。(国家公務員法第108条)
 育児休業制度とは、子が1歳に達する日までの期間を限度として職務に従事しないことができる制度である。その期間中職員としての身分は保有するが定員外として給与は支給されない。

(4)非常勤職員

 非常勤職員には日々雇用職員と日々雇用以外の職員がいる。
 日々雇用職員の勤務時間は一日につき8時間を超えないものとする。
 日々雇用以外の職員の勤務時間は常勤職員の1週間当たりの勤務時間(40時間)の4分の3を超えないものとする。(人事院規則15−15)
 非常勤職員には任用期間が1か月を超える職員と1か月以内の職員がいる。
 1か月を超える職員には人事異動通知書を交付する。
 1か月以内の職員には文書、口頭等の方法で異動を通知する。(非常勤職員の任用およびその他の取扱いについて(文人任第54号))

 継続して任用する日々雇用職員については「定員外職員の常勤化の防止について(昭36.2.28閣議決定)」があり、これに準じて各大学あるいは各大学図書館において任用更新限度等に関する取り決めがある。


*第3章の参考図書

  1. 公務員の勤務時間・休暇法詳解 / 人事院勤務時間制度研究会編著.- 学陽書房、平成10年
  2. 服務・勤務時間・休暇関係質疑応答集 / (財)日本人事行政研究所編.- 人事行政出版、 平成11年

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