はじめに

 国立大学図書館協議会(以下「国大図協」という。)は,平成10年6月に開催された第45回総会において,全国的に組織された大学図書館の連合体として,総合的に展開すべき一次情報の分担収集,一次情報の保存・提供センター機能,これら2点に関する 国立国会図書館,JSTなど他機関との役割分担の3機能について検討することを目的として,情報資源共用・保存特別委員会(以下「特別委員会」という。)を設置した。平成10年9月24日には,第1回保存特別委員会が東京工業大学で開催され,具体的な問題を検討するため特別委員会の下にワーキング・グループが設置された。
 これ以前にも,国大図協では平成4年7月の学術審議会答申「21世紀を展望した学術研究の総合的推進方策について」で提言された学術研究情報流通体制の整備のための図書館資料の効果的保存システムについて検討を行い,平成6年3月には国大図協の保存図書館に関する調査研究班が,「保存図書館に関する調査研究報告書」(以下「平成6年報告書」という。)としてまとめている。この報告書も時節を得ることなく現在に至っているが,全国立大学図書館の保存スペースの逼迫度はますます深刻さを加え,「共同保存図書館」の設立を提言した当時の調査研究班の成果を生かす意味が強く具体性を帯びてきた。
 また,平成11年6月の学術審議会答申『「科学技術創造立国を目指す我が国の学術研究の総合的推進について―「知的存在感のある国」を目指して』の中で「図書館を含む学術情報基盤及び学術資料を整備することは,学術情報全体の進展を支える上で極めて重要である。」と述べられている。このような状況の下で,国大図協は平成11年6月,要望書「今後の大学図書館改革に向けて」(以下「要望書」という。)を文部大臣等に提出しており,「資料共同利用センター(仮称)」の設置を強く望み,ドキュメントデリバリー機能を整備した新たな保存図書館の実現を要望している。
 特別委員会としては,こうした背景や過去の検討結果を踏まえて,ワーキング・グループを中心にこれまで6回の検討会を開催するとともに,国大図協加盟館に対して情報資源共用・保存に関する調査(以下「アンケート調査」という。)を実施し,基礎データの収集とその集計・分析を行ってきた。
 本報告書はこれまでの検討結果を中間報告として取りまとめたもので,全体は3章で構成され,第1章で資料の収集・保存と共用に係る現状と課題について整理し,第2章では効果的資料収集・保存の方策と資料保存施設の行うサービスについて考え方をまとめ,第3章を資料編としてアンケート調査結果を掲載している。


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