国立大学図書館協会ビジョン2025 テキストデータ(日本語) -----開始 #国立大学図書館機能の強化と革新に向けて 〜国立大学図書館協会ビジョン2025〜 令和3年6月25日 国立大学図書館協会 第68回総会  社会のあり方が急激に変容し、大学における教育・研究を巡る環境が一変する中で、国立大学図書館には、学術情報資源のデジタル化、場所や時間を問わず持続可能な情報提供体制の整備、教育・研究のデジタルトランスフォーメーションへの対応などが強く求められている。国立大学の機能の多様化、急速に進むグローバル化の中で、国の政策等を踏まえ、会員館が新たな目標を共有し、着実に国立大学図書館の機能を強化する必要がある。  また、国際的な動向や社会とのつながりを意識し、2015年に国連が掲げた世界共通の目標であるSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)実現に向けて活動していくことも重要である。  このような状況を踏まえ、国立大学図書館協会は、国立大学図書館機能の強化と革新に向けて、国立大学図書館の基本理念を次のように定める。 〔国立大学図書館の基本理念 開始〕 国立大学図書館の基本理念  国立大学図書館は、社会における知識基盤として、デジタル・非デジタルを問わず、知識、情報、データへの障壁なきアクセスを可能にし、それらを利活用するための環境を利用者に提供することで、教育の質保証、研究力やイノベーション力の強化を推進する国立大学の教育研究活動を支え、社会における新しい知の共有や創出の実現に貢献する。 〔国立大学図書館の基本理念 終わり〕  この基本理念を実現するために、国立大学図書館協会は、次のように3つの重点領域とそれぞれにおける目標、行動計画を設定する。国立大学図書館協会及び会員館は、自らの役割と活動のあり方をつねに見直しながら、各重点領域における目標の達成に向けた取り組みを進める。さらに、2025年を一つの節目としてそれまでの達成度を確認し、必要に応じてビジョンに対して検討を加えていく。なお、3つの重点領域のいずれにも該当しない場合でも基本理念を実現するために必要な活動があれば積極的に取り組むことが求められる。 ##3つの重点領域 1.知の共有:蔵書を超えた<知識や情報>の共有 2.知の創出:新たな知を紡ぐ<場>の提供 3.知の媒介:知の交流を促す<人材>の構築 ##国立大学図書館協会及び会員館の果たすべき役割  国立大学図書館協会は、会員館の業務の活性化を促進し機能向上を図るため、国内外の優れた実践例や実験的な試みなどさまざまな情報共有を進める。  また、目標の実現のために委員会等を設置し、国公私立大学図書館協力委員会や大学図書館コンソーシアム連合(JUSTICE)、オープンアクセスリポジトリ推進協会(JPCOAR)、これからの学術情報システム構築検討委員会等と連携し、調査研究や研修事業等を行う。  さらに国立大学協会や日本学術会議等と連携して、提言活動等を推進する。  会員館は、上記の活動に参画するとともに、学内の関係部署や他の国立大学図書館をはじめとする国内外の図書館等の協力を得ながら、それぞれの大学のミッションや中期目標等に沿うように目標の中から行動計画を選択し、その達成を図り、国立大学図書館の基本理念の実現をめざす。 ##重点領域1.知の共有:蔵書を超えた<知識や情報>の共有  国立大学図書館は、知の共有という観点から、大学における教育・研究に必要な知識及び情報を教育研究活動のサイクルに即して適切かつ網羅的に提供する必要がある。紙の図書や雑誌等によって構築された従来の蔵書に加え、電子ジャーナルや電子書籍、教材や研究論文・研究データといった教育研究成果、さらにはオープンサイエンスの進展に伴って今後ますます充実することが予想されるインターネット上にあって誰もが自由にアクセスできる有用なコンテンツをも対象とした知の共有のため、学術情報システムの高度化・情報発見環境の整備などの方策を検討し、実現する。 目標1-1) 教育研究成果の発信、オープン化と保存  国立大学図書館は、大学で生み出される教育研究成果の長期的な保存を図るとともに電子的流通とオープン化を推進する。 行動計画1-1-1) オープンアクセス・オープンサイエンスに係る方針を策定し、普及につとめる。 行動計画1-1-2) 学内の関係部署や各種団体と連携し、教材や研究データの保存・公開に取り組むなど、機関リポジトリ等の収録コンテンツの充実を図るとともに教育研究活動のサイクルに即した支援を実施する。 行動計画1-1-3) 機関リポジトリ等の収録コンテンツの相互運用性を高める。 目標1-2) 図書館資料の整備と利用のための保存  国立大学図書館は、紙の図書や雑誌等の蔵書、電子ジャーナルや電子書籍等の電子資料を適切に整備するようにつとめ、利用環境を整えるとともに資料のデジタル化等により長期的な利用を可能とすることで、現在及び未来の教育・研究を支える。 行動計画1-2-1) 図書や雑誌、電子ジャーナルやデータベース、電子書籍やオンライン教材、読書バリアフリーに資する資料等の利用状況等を把握した上で適切な整備につとめる。 行動計画1-2-2) 貴重資料や酸性劣化資料等のデジタル化を進める。また、デジタルアーカイブの構築を進める。 行動計画1-2-3) 他館と協力して資料の分担保存体制の構築を検討する。 目標1-3) 知識や情報の発見可能性の向上  国立大学図書館は、総合目録データベースをはじめとする、他機関と連携した学術情報システムを高度化することにより、知の総体を対象として、必要な情報がより効率的・網羅的・安定的・継続的に発見できる環境を実現する。 行動計画1-3-1) 国立国会図書館をはじめとする国内外の機関とのデータ連携を念頭に、各種メタデータの作成及び蓄積につとめる。 行動計画1-3-2) 利用者に適切な資料を効果的に提供できるように図書館システムの機能強化等に取り組む。 行動計画1-3-3) 災害等の状況下においても学術情報システムが安定的・継続的に機能するよう、学内外の関係組織等の協力を得てリモートサービスの導入や各種手続きのオンライン化、在宅勤務による業務処理体制等を整備する。 ##重点領域2.知の創出:新たな知を紡ぐ<場>の提供  国立大学図書館は、これまで人と知識や情報、あるいは人同士の相互作用を生み出すコミュニケーションの場であり、知を創出する空間であった。これからは旧来の「館」の壁を超えてその場を拡張し、物理的な場だけでなくネットワーク上に存在する情報空間をも新たな知を創出するための場として活用することにより、学習/学修・教育の質を向上させ、研究・交流活動を支援するとともに、大学と社会・地域との連携を促す。 目標2-1) 知を創出する場の拡大・整備・提供  国立大学図書館は、人と知識や情報、あるいは人同士の相互作用を生み出すコミュニケーションの場を整備し、提供することで、学習/学修・教育・研究・交流を通じた知の創出を促す。 行動計画2-1-1) 図書館の情報資源、人的資源を活用した学習/学修の場を整備し提供する。 行動計画2-1-2) 図書館の情報資源、人的資源を活用した教育の場を整備し提供する。 行動計画2-1-3) 図書館の情報資源、人的資源を活用した研究の場を整備し提供する。 行動計画2-1-4) 図書館の情報資源、人的資源を活用した交流の場を整備し提供する。 目標2-2) 社会・地域に開かれた知の創出空間の提供  国立大学図書館は、社会・地域に開かれた新たな知の創出の場を整備し提供することで、社会・地域の活性化に貢献する。 行動計画2-2-1) 学内外の人と資料が交流する、社会・地域に開かれた知の創出の場を整備し提供する。 ##重点領域3.知の媒介:知の交流を促す<人材>の構築  国立大学図書館は、図書館職員を中心としてさまざまな能力を有する人材の集合体を形成することで多様な知の共有と創出を促す。また、図書館職員の能力向上のため、研修制度等を整備する。 目標3-1) 多様な人材との協働  国立大学図書館は、学生・教職員等を含むさまざまな能力を有する人々と図書館職員とが一体となり、学術情報を整理し、新たな価値の創造を行う「キュレーション」や人と知識や情報、あるいは人同士の相互作用を促す「ファシリテーション」等の機能を提供することにより、多様な知の共有と創出を実現する。 行動計画3-1-1) 学生と協働し、図書館においてピアサポートをおこなうなど、学習/学修活動の充実に貢献する。 行動計画3-1-2) 異なる職種の人々と協働し、情報リテラシー教育をおこなうなど、大学が進める教育活動に貢献する。 行動計画3-1-3) 異なる職種の人々と協働し、研究データ管理計画の遂行を支援するなど、大学が進める研究活動に貢献する。 目標3-2) 国立大学図書館職員の能力向上  国立大学図書館は、これまで培ってきた学術資料に関する専門的知識やメタデータ運用能力並びに学習支援の経験に加え、デジタル化資料への対応など新たな知識を職員に習得させ実践させることにより、大学の教育研究及び学術情報流通をめぐる環境変化の中で国立大学図書館に期待される機能を実現する。 行動計画3-2-1) 図書館職員に求める人材像を明確化し、その採用・育成方針を策定する。 行動計画3-2-2) 中・長期的な職員の育成方針に基づき、職員に標準的能力及び自館の特性に応じた専門的能力を習得させる。 -----終わり