II.図書館電子化システム特別委員会関東・東京地区ワーキンググループ平成12年度活動報告

1)電子ジャーナルについて
平成12年度の会合は次のように開催した。

第1回 平成12年7月17日(月) 場所:埼玉大学・東京ステーションカレッジ
 関東・東京地区WG(以下、「WG)という)の今年度の活動目標(電子ジャーナルのコンソーシアム契約の安定化)を確認した。
 具体的なコンソーシアム活動であるAcademic Press社のIDEALオープン・コンソーシアムJapan IDEAL Open Consortium/National University(WGのうち、5大学で平成12年度に構成。以下、「JIOC/NU」という)の平成13年度契約条件の改定方策と参加大学拡大等について検討した。非公式に複数大学から反応があったことから、WGで対応できる事務量等を勘案し可能な範囲内で漸進的に拡大することを確認した。
 OCLC社のElectronic Collections Online(以下、「ECO」という)サービスについて、同社からヒアリングを行った。また、ECOの利用トライアルに参加した大学との間で意見交換を行った。

第2回 平成12年10月18日(水) 場所:埼玉大学・東京ステーションカレッジ
 2年目となるJIOC/NUの平成13年度新規参加呼びかけに応じて11大学が加わること、総契約金額規模も目標とした100万ドルを超えたこと、ならびにAcademic Press社との契約改定も参加大学にとって有利な結果をもたらしつつあることを確認した。

第3回 平成13年2月14日(水) 場所:埼玉大学・東京ステーションカレッジ
 電子ジャーナル・タスクフォース(以下、「EJTF」という)の活動をレビューして、意見交換を行った。また、この間の相互の関係は、下記の「D電子ジャーナル・タスクフォースへの対応」で言及した。
 JIOC/NUが当WGの活動範囲を超えたことから平成13年度以降の運営について協議し、このWGとは切り離して別の運営組織を作ることに合意した。
 また、図書館電子化システム特別委員会が今年度で活動を終了する意向であること、EJTFが別途精力的に活動していることから、このWGだけ活動期間を延長する理由に乏しいと判断し活動を終了することとした。ただし、電子ジャーナルの導入については、契約を含めて国立大学にとって依然として不安定な状態が続くと思われるので、EJTFの活動結果とも関連するがなんらかの検討組織を引き続き設置することが必要であろうとの意見で一致した。

 WGの会議開催は以上の3回であるが、この間メーリング・リストを活用した情報交換は常時行われ、意見交換と情報の共有化が確実に実現した。
また、JIOC/NUの平成13年度契約での拡大についても、WGの中で中心的に取りまとめていただいた千葉大学ならびに横浜国立大学の尽力により、関東・東京地区の当協議会会員館を中心に案内が出され、電子ジャーナル・コンソーシアムとしては多少変則的な方式ではあるが、結果的には先述の新たな11大学に国立天文台の1機関を加えた全国の17大学・機関に拡大し、国内における最大規模の電子ジャーナル・コンソーシアムに発展できた。(この経過及びコンソーシアム活動に共通すると思われる課題については、JIOC/NUから、「大学図書館研究」第61号誌上で公表される。)

 この他、平成12年度の活動の過程で、下記の知見あるいは成果が得られた。
@電子ジャーナル購読経費の前金払い
年来の活動の成果として、平成12年12月25日付で文部省大臣官房会計課と学術国際局学術情報課の連名による事務連絡「電子出版の形態をとる定期刊行物の取扱いについて」が発せられ、「定期的に刊行される電子出版のうち、役務提供契約によるものについても、(略)予算決算及び会計令第57条第2号に定める定期刊行物に含めることとし、前金払できることに」なった。
A「電子ジャーナルの購入形態としてのコンソーシアム契約について」
文部科学省研究振興局学術機関課から東京大学附属図書館を通じて、文部科学省大臣官房会計課との協議のための説明資料の提出依頼があった。千葉大学、東京大学が中心となって意見を集約して標記資料を提出した。
B他省庁の動向調査
Aに関連して、主として筑波大学が関係機関、関係者から情報収集を行ったが、他省庁研究機関では、電子ジャーナルとしての契約(コンソーシアムを含め)には、会計法規上の手続きが明確でない等の理由で、消極的な態度で対応していることが判明した。
CAcademic Press社以外の電子ジャーナルの調査
AggregatorであるOCLC社のECOを始め、個別出版社では、Blackwell社、Wiley社、ISI社、Springer社等の電子ジャーナル契約、あるいはコンソーシアム契約について、WG全体で、または、各大学毎に出版社に対応し、その内容について検討を加えた。しかし、多くは大学側で電子ジャーナルの契約用に用意できる新規財源が乏しいことを理由にコンソーシアム契約には至っていないが、積極的に売り込んでくる出版社は少なくなかった。
 また中には、国立大学に適用されている会計法規上の制約、国立大学の法人化論議の影響、学内における図書館の役割等国立大学附属図書館の置かれている環境について知識が十分でない出版社も見られ、契約以前の議論に時間を費やした例もあった。全体に、電子ジャーナルの契約については従来の外国雑誌取扱い業者の関与は小さく、出版社が直接接触を求めてきているが、国立大学附属図書館固有の事情を把握して例外的な対応策を講ずるなどの経過措置が当面は必要と思われる一方で、多くは日本に子会社を置いていないために今後の契約交渉には、時間を要することが予想される。
D電子ジャーナル・タスクフォースへの対応
EJTFの設置にあたりその目的を達成するために、WGの活動での知識と経験を反映することが有効であることから、比較的少数でというEJTFの方針もあってWGの一部メンバーが参加し、またWG主査である東京工業大学の事務部長が両者のリエゾンを担当したほか、個々にモニターとして参加した大学もあった。
 EJTFでのアンケート調査の実施について、WGから小西・筑波大学図書館部情報システム課長ならびに砂押・東京工業大学情報管理課雑誌収集掛員が協力した。(WG以外からは、EJTFモニターの友光・山梨医科大学教務部図書課長が参加。)
 なお、EJTFの活動内容が、エルゼビア社との間でScience Directに関し契約条件、アーカイブやミラーサーバの運用、インターフェースの改善、アクセス統計などの協議だけでなく電子ジャーナル教育プログラムの共同開発へと拡張し、さらには他社の電子ジャーナル・パッケージのヒアリングからコンソーシアム契約の検討も視野に入ってきたことから、WGとしてはEJTFの包括的な活動を見守ることとし、WGの活動はIDEALに関するコンソーシアム契約の充実・安定化に関する範囲に限定した。


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