図書館情報システム特別委員会ＩＬＬシステム専門委員会第２次報告: 資料１．「ＩＬＬシステムに係るアンケート調査（平成６年度実施）」結果報告

資料１．「ＩＬＬシステムに係るアンケート

調査（平成６年度実施）」結果報告

Ⅰ．調査概要

　１　調査目的
　　本委員会は、平成６年６月の「第１次報告」を受けて、「国立大学図書館における
　ＮＡＣＳＩＳ－ＩＬＬシステム利用指針（案）」を作成することを重要な課題の一つと
　してとらえ準備を進めてきた。この調査は、そのための参考データを得るとともに、国
　立大学図書館・室レベルにおけるＩＬＬサービスに係る実情を把握するために実施した
　ものである。

　２　調査期間及び調査時点
　　平成７年２月１６日付けで３月３日を提出期限として調査を依頼した。調査時点は平
　成７年２月１日現在とし、例外は調査項目ごとに明記した。

　３　調査対象
　　国立大学の中央図書館（本館）、分館及び「大学図書館実態調査」の調査対象となっ
　ている部局図書館・室を対象とした。

Ⅱ．結果概要
　　対象となった３１７館・室のうち、２９６館・室から回答があった。回答率は９３％
　であった。
　　ここでは、アンケートの回答及び意見に現れた、運用上の特長・傾向、問題点につい
　てその概要を報告する。
　　なお、アンケートの詳細な調査結果を希望する館は国立大学協議会の図書館情報シス
　テム特別委員会委員長館又はＩＬＬシステム専門委員会主査館へお申し出ください。

　１　運用上の特長、傾向

　　(1) サービス形態
　　　①ＮＡＣＳＩＳ－ＩＬＬには全体の８４％（２４７館・室）が参加している。参加
　　　　の予定のない館・室（３９）の大部分が部局図書館・室である。
　　　②ＮＡＣＳＩＳ－ＩＬＬに参加している館のサービス形式は一様でない。
　　　　複写受付についてみると、「自館・室分の受付のみ行う」が５８％、「他の館・
　　　　室の受付も行う」が１２％、「自館では行わず他の館・室が窓口になっている」
　　　　が２６％、「複写受付を行っていない」が４％となっている。
　　　　以上の結果からみると３０％が受付窓口になっていないことがわかる。

　　(2) 資料の配置
　　　　資料が図書館だけでなく分散している。図書蔵書（平成５年度末現在、
　　　　７４，０１８千冊）の３１．７％、購入雑誌（種類数３，３９１百種）の
　　　　４２．９％が研究室備え付けとなっている。

　　(3) 業務量

　　　①業務量は穏やかな増加傾向を示している。
　　　　平成６年度（平成７年２月１日現在における年度末の予測値）の業務量を平成
　　　　５年度と比較すると受付、依頼いずれも１．１倍強となっている。しかしなが
　　　　ら、ＩＬＬシステム稼働当初に比べると、伸び率は低下している。

　　　②受付件数は依頼件数に比べ平均１．３倍となっており、規模別で見ると７学部以
　　　　下の大学がいずれもほぼ同数であるのに対し、８学部以上の大学では２倍となっ
　　　　ている。

　　　③担当者一人当たりの処理件数には館・室によってかなりのばらつきがある。
　　　　平成６年度における、担当者一人当たりの平均件数は、複写受付１，３８５件、
　　　　複写依頼１，０４８件、貸借受付５３件、貸借依頼４７件であるのに対し、それ
　　　　らの最大数は、それぞれ、１１，５１２件、５，３００件、６００件、４５０件
　　　　となっている。複写受付を例にとると、最も多いところは平均の８倍の業務を処
　　　　理していることになる。

　　　④特定館への集中度
　　　　平成６年度の複写受付件数を見てみると、上位１０館・室に全体（５８５，
　　　　１６１件）の３２．５％にあたる１９０，１１１件が集中している。この１０館
　　　　・室の職員数、ＩＬＬ担当者数、購入雑誌種類数の全体に占める比率は、
　　　　１１．２％、９．５％、１０．７％である。

　　　⑤ＮＡＣＳＩＳ－ＩＬＬシステム率
　　　　平成６年度は、複写受付の７４％（９３，１１６件）、複写依頼の８９％
　　　　（３９５，９７９件）、貸借受付の８３％（１８，７９３件）、貸借依頼の
　　　　８２％（１６，５７０件）がＮＡＣＳＩＳ－ＩＬＬで行われている。

　　(4) 受付業務

　　　①迅速さが必要とされる処理（受付、発送）は大半の館が望ましいタイミングで行
　　　　っている。
　　　　日常の受付は、８９％の館・室が１日１回以上行っている。また、ＳＥＮＤコマ
　　　　ンドの発行は８３％の館・室が発送当日までに行っている。

　　　②受付から発送までの日数は資料の配置箇所によって異なる。
　　　　自館・室所蔵の場合、８９％の館・室が受付から３日以内に発送している。しか
　　　　し他の館・室所蔵の場合は５３％、研究室備え付けの場合は４９％と低下してい
　　　　る。すなわち、受付窓口から遠くなるほど入手発送までに時間を要する結果とな
　　　　っている。

　　　③謝絶転送の理由
　　　　最も多いのが「参照不完」（書誌・所蔵事項の不備）である。原因は、依頼時の
　　　　書誌、所蔵の確認不足、不正確な記入にあると思われる。「所在不明」は「参照
　　　　不完」と同じ原因による他、総合目録データの未更新、入力ミス等によるものが
　　　　あると思われる。この他、資料は所蔵されているが提供できる状態にない「貸出
　　　　中」、「製本中」、「研究室と連絡がとれない」等の理由も上位を占めている。

　　　④研究室備え付け資料の利用について
　　　　研究室備え付け資料については自館・室所蔵資料に比べ、ＩＬＬ利用が相当程度
　　　　制約されている、すなわち、文献複写で２２％、現物貸借で４５％の館・室が利
　　　　用制限ありと回答しており、研究室にあることがＩＬＬ利用上は障害となってい
　　　　る。

　　　⑤サービス・ステータスの変更
　　　　ＩＬＬサービスを停止するサービス・ステータスの変更は増加している。８４％
　　　　の館・室がサービスステータスを「Ｎ」にしたことがあると答えており、各館・
　　　　室が「Ｎ」にした日数を合計すると平成５年度は２，１３３日、平成６年度は
　　　　３，５３３日で、１．５倍に増えている。

　　(5) 依頼業務

　　　①処理日数
　　　　迅速さが必要とされる各処理については、多くの館が迅速に行っている。すなわ
　　　　ち、申込から依頼処理は９２％が２日以内（５４％が１日以内）、「ＯＫ」
　　　　「ＢＯＲＲＯＷ」コマンド発行は９１％が２日以内（６１％が１日以内）、到着
　　　　から利用者への通知は９８％が２日以内（７６％が１日以内）に行っている。

　　　②依頼先の選定基準
　　　　選定の際に留意している点で、最も多かったのは「国立大学優先」であるが、こ
　　　　れは料金の決済手続きが簡便なためであると思われる。そのほか、「近隣地区優
　　　　先」「処理の迅速なところ」「受付館と所蔵館が一致しているところ」「意識的
　　　　に分散」が多くの館・室に共通してあげられているが、いずれも、その方が早く
　　　　入手できるからであると思われる。一方、選定の際に避けるケースとしてあげら
　　　　れているのは「受付館と所蔵館が一致していない場合」「処理の遅いところ」
　　　　「大規模大学等受付量が多い大学」「公立・私立大学」等である。

　　　③同一館への同時依頼
　　　　同一館への同時依頼については、約４０％の館・室が自主的に制限している。
　　　　２２％の館・室が５件以内、１７％が１０件以内に制限と回答している。特に設
　　　　けていない館・室の割合は中央図書館（本館）よりは分館、分館よりは部局図書
　　　　館・室に多くなっている。

　　　④自機関所蔵文献依頼について
　　　　７４％の館・室が行ったことがあると回答している。製本中、未着・欠号、教官
　　　　長期貸出中等やむを得ない理由が大半である。自館利用者からの依頼であって
　　　　も、自機関において速やかに対応できない場合（例えば遠隔地のキャンパスに所
　　　　蔵されているなど）にはＩＬＬを利用して他館に依頼している。

　　(6) 総合目録

　　　①図書所蔵データの入力
　　　　蔵書冊数（平成５年度末現在）の合計は７４，８８２千冊であり、入力対象とな
　　　　らない製本雑誌等を除いた入力対象冊数は、５０，７４８千冊（蔵書の６８％）
　　　　である。入力済み冊数は１０，２６１千冊で、入力対象件数に対する入力率は
　　　　２０％という結果である。すなわち８０％については他館から検索できないた
　　　　め、実際にはＩＬＬによる利用が難しい状態におかれている。

　　　②雑誌データベースの更新頻度
　　　　５７％の館・室が学術雑誌総合目録データの調査時に行っており、データの更新
　　　　が速やかに行われているとは言いがたい。

　　(7) ＩＬＬに関連した業務上の整備・改善
　　　　「業務増への人的対応」「所蔵への反映」「学内配送体制の整備」をなんらかの
　　　　形で行ったと回答したのは、それぞれ、２１％、６％、７％である。大部分の機
　　　　関がＮＡＣＳＩＳ－ＩＬＬ稼働以前の体制のままＩＬＬ業務を行っていると言え
　　　　る。

　２　問題点
　　　　各館が問題点としてあげた事項及びそれに関する主な意見を以下に列記する。

　　(1) 受付業務上関連

　　　①レンディング・ポリシーの確認
　　　　○レンディング・ポリシーを確認しないで依頼されることが多い。
　　　　○ＦＡＸを「Ｎ」としているのに依頼がある。

　　　②雑誌、所蔵の確認、記入
　　　　○参照不完（書誌・所蔵事項の不備）のものが多い。
　　　　○所蔵典拠の不明確な依頼が多い。

　　　③依頼件数
　　　　○一日に同じ館から多量の依頼がくる。

　　　④依頼資料
　　　　○（著作権法で禁じられている）最新号の依頼がある。
　　　　○大学の紀要等は発行大学へ依頼すべきである。
　　　　○新刊書の依頼（貸借）
　　　　○二次資料の依頼（貸借）
　　　　○書店で購入できる（容易に入手可能な）文献の依頼

　　　⑤近隣優先
　　　　○近隣優先の原則が守られていない。

　　　⑥迅速な処理・正確な処理
　　　　○コマンド処理が遅い。
　　　　○「ＯＫ」コマンドの発行が遅い。
　　　　○「ＩＮＱＵＩＲＥ」で返した分に回答が戻らない。
　　　　○他館で参照不完になった分がそのまま「ＲＥＴＲＹ」される。
　　　　○依頼番号は「ＬＡ」番号で代用せず独自の番号を使って欲しい。
　　　　○「ＳＥＮＤＢＡＣＫ」処理がされないで放置されている。

　　　⑦ＦＡＸの取扱
　　　　○ＦＡＸ送信「Ｎ」にしているのに依頼がある。
　　　　○同一館から多量のＦＡＸ依頼がくる。
　　　　○ＦＡＸ、速達の依頼が増え、優先すると他の依頼の処理が遅くなる。
　　　　○ＦＡＸの場合、研究室備え付け資料であったときにすぐに対応できない。
　　　　○依頼業務を含め、ＦＡＸの場合、対応が大変なので、料金の値上げ、枚数制限
　　　　　などを考慮して欲しい。
　　　　○ＦＡＸに対する認識が一致していない。
　　　　○ＦＡＸによる複写文献送付依頼を受け付けない館のリストがあるとよい。

　　　⑧研究室資料
　　　　○研究室の所蔵資料が多いので時間と労力がかかる。
　　　　○研究室の教官と連絡がとりにくい。

　　　⑨受付館のコマンド処理
　　　　○教官と連絡がとりにくい時「処理中」のままにしておく時間について迷う。
　　　　○謝絶理由を明記して欲しい。
　　　　○「ＩＮＱＵＩＲＥ」と「ＰＡＲＤＯＮ」の使い分けをして欲しい。

　　　⑩ＮＣデータベース
　　　　○ＮＣ登録データベースのメンテナンスが出来ていないために、所蔵しない資料
　　　　　の依頼を受けることがある。
　　　　○劣化資料等で相互利用対象外のフィールドを設け、ＩＬＬ画面で認識できると
　　　　　よい。
　　　　○貸出不能であることがＩＬＬ画面で分かるとよい。

　　(2) 依頼業務関連事項

　　　①書誌の確認
　　　　○書誌の確認がしにくい文献の申し込みが多い。

　　　②所蔵データの更新
　　　　○雑誌の所蔵データが更新されていないため、依頼したところ謝絶された。
　　　　○雑誌のデータ更新を年１回以上行うことを半義務化することを提案する。
　　　　○古い図書の所蔵調査に時間がかかる（貸借）。

　　　③研究室所蔵の確認
　　　　○研究室図書であることがロケーションからは分らない場合が多い。
　　　　○所蔵が「図」（図書館）となっていても実際には研究室に所在している場合が
　　　　　ある。
　　　　○所在場所を明記することができないか、そうでないと至急入手したい場合に不
　　　　　都合である。

　　　④サービスステータス
　　　　○安易に「Ｎ」にしている大学が多いように感じる。
　　　　○「Ｎ」にする場合、理由と期間を明示して欲しい。

　　　⑤受付処理
　　　　○至急（ＦＡＸ）で依頼しても相手方が対応してくれないことがしばしばある。
　　　　○受付処理が極端に遅いところがある。少なくとも１週間か１０日で処理して欲
　　　　　しい。

　　　⑥「処理中」の放置
　　　　○「処理中」のまま長く放置されることがある。
　　　　○自館で処理できないものを何週間もたってから次館に転送している館がある。

　　　⑦「ＳＥＮＤ」コマンドの発行遅延
　　　　○資料が到着しても「ＳＥＮＤ」コマンドが発行されていない場合には「ＯＫ」
　　　　　が発行できない。
　　　　○「ＳＥＮＤ」コマンドが発行されずかつ料金のメモが入ってない場合には、利
　　　　　用者に料金通知が行えず複写物を渡せない。

　　　⑧依頼資料
　　　　○学内にある文献もＩＬＬの手続きが簡単なため他大学に複写依頼をするときが
　　　　　ある。
　　　　○研究室備え付け資料の依頼に応じてくれないケースがしばしばある。
　　　　○貸出不能の扱い、あるいは広範囲の制限を行っているところが多い。
　　　　○館によって貸出期間が異なる。
　　　　○貸出期間が極端に短い機関がある（例：２週間）。
　　　　○比較的大きな図書館で受付窓口が統合されている場合、貸出冊数が単科大学と
　　　　　同じであるのは不都合である。

　　(3) システム関連事項
　　　　○一日の受付量の最大量を設定できないか。
　　　　○機関別コード（国・公・私立）を設け、所蔵館、受付館、依頼館の略称に付与
　　　　　して欲しい。
　　　　○ＣＯＰＹコマンドでコメントのコピーをしたい。
　　　　○よく使うコメントは、選択することによってコメント欄に入るような仕組みが
　　　　　欲しい。
　　　　○ＣＬＮＴ、ＣＬＮＴＰのコピーができるとよい。同一申込者の処理が続くとき
　　　　　に便利。
　　　　○速達の依頼が受付業務画面に表示されるとよい。
　　　　○受付館側からの他の依頼先を見たい。
　　　　○依頼館側から現在の受付館がわかるとよい。
　　　　○処理中の時は依頼業務画面から消えてしまうので確認したいとき不便。
　　　　○処理中のものに対してＩＬＬシステム上で問い合わせをしたい。
　　　　○ＢＬＤＳＣへのＣＨＡＳＥコマンドのような機能があれば便利。申込後至急の
　　　　　入手希望の申し出に対し発送に切り替える等の連絡に使用できる。

　　(4) その他
　　　　○徴収猶予許可について全国統一の番号を発行して欲しい。
　　　　○徴収猶予制度や料金前納制度が受付業務を煩雑にしている。
　　　　○国立大学以外への支払処理が煩雑。校費で支払いできない場合がある。
　　　　○国・公・私立を含めた料金精算制度を確立して欲しい。
　　　　○送料の清算制度を実現して欲しい。
　　　　○送料の他に手数料をとることを検討して欲しい。
　　　　○複写料金規定でＡ３版およびカラー料金を設定して欲しい。
　　　　○依頼件数が急速に増加し対応が困難になっている。
　　　　○受付件数の増加が他の業務を圧迫している。
　　　　○サービスをよくするほど受付件数が増大する。
　　　　○ＩＬＬ経由と郵送と２通りの依頼があるが、業務簡素化のためＩＬＬ経由に統
　　　　　一して欲しい。