報  告




1.はじめに
 大学図書館で扱う学術情報の加速度的増加に対応するため、従来からの流通メカニ
ズムの中に、制度を新設することなどにより改善を図ってきた。例えば国立大学図書
館間にあっては、複写依頼の様式を改めるとともに、複写経費を複写データ処理セン
ターで一括処理し相殺する制度が、昭和54年3月発足した。また、公私立大学等の
図書館に対する複写経費の徴収猶予制度は平成元年度から実施された。平成4年度に
入ってからは、学術情報センターがNACSIS−ILLシステムをリリースしたこ
とによって、より統合的な事務処理ツールを得ることができ、一層の処理能力の向上
が期待されているところである。
 一方、理念的な見地からILLを支える精神について考えてみた場合、それが「互
助・互恵」なのか「権利・義務」なのか、必ずしも図書館員の共通認識としてあるわ
けではない。むしろエンドユーザからの二ーズに押されて、十分な議論をする前にI
LLが拡大していったとみるのが実態に即している。しかし理念はともあれ、図書館
間における相互の協力を欠いては十分な教育研究支援サービスができないことは自明
であり、平成3年度における大学設置墓準の大改正の中でも、図書館問の協力に関す
る条項が省令として明文化された。このことがもつ意味は、図書館に求められている
機能を考える上で大きいものがあるといえる。
 さらに、平成5年12月学術審議会学術情報資料分科会学術情報部会は大学図書館
機能の強化・高度化を推進していく上で、課題となる事項及びその課題解決のための
方策等について取りまとめを行った。
 本専門委員会では、これらを踏まえ、改善すべき事項、拡充すべき機能、新たに検
討しなければならない事柄等について検討を重ねてきた。その結果、間題が多様であ
ること、解決に要する時間に長短があること、年度ごとの委員会負担を平滑化する必
要があることなどから、まずILLに係る諸間題を要素ごとに項目化し整理した。今
後、項目化された課題は年度ごとの重点的検討課題として選択され、改善実施される
ことが望ましいものとし、これらの課題のうち喫緊と思われるものを第2項で、継続
検討すべきものを第3項で述べることとする。