1.はじめに


 コンピュータと通信技術の進歩により、情報ネットワークが目覚しい発展を示している。
それを通じて国内はもとより世界各地の図書館目録や二次情報のデータベースが利用可能
となった。また、新しい情報媒体の出現により、情報伝達の方法が多様化しその質の向上
も著しい。例えばCD−ROMや光ディスクなど高密度記録媒体には、文字情報のみでな
く音声や画像等の情報が記録できるようになり、ネットワークを通じて全文データベース
のオンラインサービスや画像伝送サービスが開始されている。大学図書館にとってはこの
ような情報技術の進展を利して、効果的な情報サービスを実現するかが課題であり、特に
文献複写など従来型のサービスにも活用できる1次情報の画像伝送サービスが求められて
いる。
 現在、国立大学図書館においては、学術情報ネットワーク(高速ディジタル回線網)の
高度利用の一環として昭和63年に設けられた大学図書館間の高速ファクシミリ・ネット
ワークを利用し、図書館間相互貸借(ILL)で文献複写のファクシミリサービスが行わ
れている。高速ファクシミリ・ネットワークでは、学術情報ネットワークが基幹部分をつ
なぎ、支線部分はNTT電話回線によっている。したがって学術情報ネットワークに直結
している図書館(以下、「ノード館」という。)と直接接続できないために電話回線等で
ノード館に接続し高速ファクシミリ・ネットワークを利用している図書館(以下、「サテ
ライト館」という。)がある。ノード館には高速ディジタル回線用ファクシミリであるG
4機が、またサテライト館にはアナログ回線用のG3機が設置されている。
 このファクシミリ・ネットワークの問題はG3機とG4機の並存にある。G3機を使用
している図書館からはより高速で高解像度のファクシミリ機の設置についての要望が出さ
れてきたし、また技術進歩の状況に合わせて全国的に均一で質の高いファクシミリサービ
スを実現するために、学術情報ネットワークの幹線網以外の支線網の整備促進の必要なこ
となどがこれまでに提起されてきた。国立大学図書館協議会(以下、「国図協」という。)
平成4年度第3回理事会(平4・10・28)においても、今後の図書館サービスを展開
していくためには学術情報ネットワークの一環として、ファクシミリサービスの改善が改
めて提起されていた。一方、平成5年4月、NTTのISDNサービス網の全国的な普及
に伴いファクシミリ業界は標準化への対応を強め、その結果、高速ファクシミリ・ネツト
ワ一クで使用しているG4機(パケット交換網に対応し、またG3機からの交信を中継す
る機能を付加した特別仕様)の生産メーカーから、平成6年度以降同機の供給を中止する
旨の連絡があった。
 このような事態の変化を契機に、情報通信環境の発展を踏まえたファクシミリ通信を含
む画像伝送サービスの在り方を急ぎ検討するため、国図協平成4年度第4回理事会(平5・
5・27)において事務局内に時限的に検討委員会を設けることが了承され、これを受け
て国図協平成5年度第1回理事会(平5・7・1)において、「国立大学図書館協議会画
像伝送サービス検討委員会」(以下、「本委員会」という。)が設置された。

 本委員会の調査・検討事項は、次の3点である。
 (1) 高速ファクシミリ・ネットワークの運用状況及び問題点の把握
 (2) 高速ファクシミリ・ネットワークの展開指針の設定
 (3) 大学図書館における新しい画像伝送サ一ビスの設計
 また本委員会では第1回委員会(平5・7・27)において、これら3点の課題につい
て協議し、次の方針を設定した。
 (1) 高速ファクシミリ・ネットワークの運用状況及び問題点の把握について
   一定の調査期間を設け、全国の国立大学図書館におけるファクシミリの利用実態調
  査を実施する。併せて、現行のファクシミリ送信に要する通信料とNTTによるファ
  クシミリ・ネットワークであるFネットで送信すると想定した場合の通信料の料金比
  較を行う。
 (2) 高速ファクシミリ・ネットワークの展開指針
   ファクシミリを取り巻く情報通信技術の状祝を調査するとともに、(1) の調査結果
  を参考に今後の高速ファクシミリ・ネットワークの展開について検討する。
 (3) 大学図書館における新しい画像伝送システムの設計
   ファクシミリを含む画像伝送サービスの状況を調査し、今後ドキュメント・デリバ
  リー・システム(DDS)を視野に入れ、どのような画像伝送システムが考えられる
  か具体的に検討する。