は し が き

 本調査研究班が、昭和63年6月に第一次報告書を発表してからちょうど1年が経
過した。しかし、この1年は、国立大学図書館にとっては、従来の数年分にも匹敵す
るような急激な変化を経験した1年となった。
 すなわち、外国出版物の購入という事務を通して、国立大学図書館も又、日本経済
全体の国際化への対応の渦の中に否応なく投げ込まれ、国際的な経済構造・流通構造
への視野なくして日常業務を行い得ないという事態に直面した1年となったのである。
昭和60年代初頭の急激な円高傾向にともなう円高差益の還元という国内的な対応か
ら、一歩踏み込んだ国際的な対応を必要としたのである。
 具体的には、一つは昭和62年度政府補正予算による外国図書購入を契機として実
行された国際的な競争原理に基づく購入契約方法の導入であり、いま一つは、海外書
籍取次業者の国内への積極的な参入により実現を見た国際的な流通経路の合理化、す
なわち直接購入の試み及び並行輸入の試みである。
 これらの実践例によって国立大学図書館の外国出版物購入事務は、本調査研究班の
第一次報告書に示した係数方式や円定価からの割引方式という従来の外国図書購入の
価格設定方式に加えて、新たな方法を付け加えることの端緒を開くことができたとい
える。
 本調査研究班は、2年目の調査研究作業の重点として、1.競争原理に基づく契約
方法による外国出版物の取扱、2.直接購入による外国出版物の取扱、及び3.並行
輸入についての実践例をもとに調査・分析・検討を行うとともに、4.外国為替相場
の変動に即応するとともに、適切な手数料及びディスカウント率を加味した予定価格
作成方法について試案を提示することとした。
 本報告書は、それらをとりまとめたものである。とりまとめにあたっては、国立大
学図書館協議会加盟各館からの協力はもとより、一部、書店との価格協議の方法、並
行輸入の考え方等に関し公正取引委員会事務局からも多大の御教示と御示唆を頂いた。
ここに記して謝意を表したい。
 平成時代とともに、大学図書館は情報の流通という側面からだけでなく、物品(外
国図書)の輸入という会計事務の側面からも、国際化への対応を余儀なくされる時代
を迎えた。本報告書が大学図書館における外国出版物の購入に関する共通理解と事務
の合理化への一助となれば幸いである。
                               平成元年6月

                   外国出版物購入価格問題調査研究班