平成17年6月30日
国立大学図書館協会
第52回総会
1990年代のSTM雑誌の価格高騰により、一層深まった雑誌の危機は、学術コミュ ニケーションの機能に深刻な打撃を与えてきた。この間、世界の図書館員は、その機 能の回復を目指して、SPARC事業の展開やICOLC活動でグローバルな取り組みを展開 してきた。
国内的にも、我が国の大学図書館は、国立大学図書館協会電子ジャーナル・タスク フォースの外国出版社との直接交渉や、国立情報学研究所を中心としたJ-SPARC事業 との連携など、学術コミュニケーション機能の回復に向けて、取り組みを進めてきた。 しかし、大学予算は、一向に好転しない国の財政事情から、一層厳しさを増すことが 予想できる。一方、電子ジャーナル各社は、電子ジャーナル・タスクフォースの交渉 により、価格上昇に一定のキャップ制を打ち出しているが、毎年の値上げを常として いる。今、私達図書館職員が手を拱いていると、早晩、大学予算の減少と出版価格の 高騰は、我が国の学術情報基盤に重大な学術情報コンテンツの空白をもたらす事態を 生み出すことになる。
本年度のシンポジウムは、世界的な学術コミュニケーション機能回復の新しい手段 として、注目を集めている「機関リポジトリ」に焦点をあて、各大学で何が取り組ま れ、どのように取り組むべきかを検討したい。